開幕戦をポール・トゥ・ウインで飾った#16 山本尚貴。《撮影 遠藤俊幸》

全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)開幕戦は22日、鈴鹿サーキットで決勝日を迎え、チーム無限の山本尚貴がポール・トゥ・ウインで自身2年ぶりの優勝を飾った。2位には予選14位だった関口雄飛が追い上げ、3位には野尻智紀が入っている。

51周、300kmという長丁場の決勝レースは、路面温度40度という暑さのもと、午後1時50分にフォーメーションラップスタートを迎えた。スタートタイヤの選択はソフトとミディアムがほぼ半数ずつ。予選トップ6はミディアムを選択し、中団〜後方にソフト発進が多い構図となった。

レース戦略は1ストップが基本となって展開していくが、なかには2ストップ作戦を採る陣営も出てくるなど、今季から全戦で実施されるドライ路面用タイヤの「2スペック制」が、やはり戦略の多岐化を呼ぶことにもなっていく(決勝では両スペックとも使用しなければならない)。

ポール発進の#16 山本尚貴(TEAM MUGEN/エンジンはホンダ)は首位を守ってスタート。序盤、いいペースで追い上げていったのは予選5位の#17 塚越広大(REAL RACING/ホンダ)で、3周もしないうちに2番手まで上がってきた。#17 塚越は2ストップ作戦を採っていたので、レース前半は#16 山本よりも軽めの燃料搭載量で走っていたが、#16 山本はその攻撃も封じ込んでトップを走り続ける。

そしてレース中盤には各陣営が次々とピットストップを実施。そのなかでも#16 山本は実質的な先頭の座を譲ることなく走り続けた。レース終盤、予選14位から2番手への浮上を果たした#19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)との差が急速に縮まるところはあったが、ほぼ完勝といっていい流れで#16 山本は2016年開幕戦鈴鹿以来の勝利を飾った。

優勝した#16 山本尚貴のコメント
「嬉しい、のひとことです。最後は関口選手にかなり追い込まれるかたちになりましたし、すごく喜べる勝ち方ではなかったかもしれませんけどね。レース中も自分の調子はいいはずなのに、違う戦略で走っているクルマが前に(見た目の先頭に)出てきたりして、自信がなくなるというか(苦笑)、展開が読めなくなるところもありました。でも、終わってみてこういう結果になったのはなによりです。チームとさくら(ホンダのモータースポーツ関連本拠地)のみんなに感謝したいですね」

2013年SF王者、ホンダの国内トップ戦線のエースと呼ばれて久しい山本尚貴(29歳)にとって、この勝利は大きな意味での流れを引き寄せる、実に意義深いものとなるだろう。なぜかといえば、最近の彼は自身よりも“周辺”に話題が多い状況が続いていたからだ。

昨年はチームメイトになったピエール・ガスリー(今季トロロッソ・ホンダでF1に参戦中)に話題をもっていかれる展開になり、今年のチームメイトもホンダの若きF1候補生・福住仁嶺と話題性たっぷりの存在。さらに今年はSUPER GT/GT500クラスで元F1王者ジェンソン・バトンがチームメイトになったことでも注目を浴びている。また、プライベートでは一昨年に狩野恵里さん(テレビ東京アナウンサー)と結婚し、今年は双子のお子さんが誕生と、そういう意味でも自身(の本業)以外に話題が集中しがちな状況がたまたま続いていた。

もちろんプライベートの方は嬉しい話題ばかりだが、今季開幕前、山本は雑談交じりに「今年は自分が(本業で)注目されるようにしていかないといけませんね」という決意を口にしていたものである。

そしてSUPER GT開幕戦では獅子奮迅の働きで2位を獲得、さらに今回SF開幕戦では勝ってみせた。ホンダの好調さと相まって、2018年を“山本尚貴が主役の年”とするためには最高のスタートといえるだろう。内容的にもタイミング的にも素晴らしい勝利だった。

2位は#19 関口。ソフトを履いてスタートする戦略で、都合12台抜きというかたちでの2位奪取に、「昨日の予選では赤旗中断のタイミングが自分にとって不運で、非常に不本意な結果でしたけど、今日2位まで追い上げることができて満足しています」と語っている。レース途中、チームメイトとの接触というハプニングも乗り越えての快挙だった。

3位には#5 野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)が続いた。#5 野尻は3番グリッドからのスタート直後に失速してポジションを落としたが、最終的には3位に返り咲いている。4位は#1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)。5位に#65 伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)が入り、2ストップ作戦の#17 塚越は最終的に6位だった。

予選2位の新人 #15 福住仁嶺(TEAM MUGEN/ホンダ)はシフト系のトラブルで残念ながらリタイア。今季初優勝が期待される#18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG/トヨタ)は決勝10位。注目ルーキーのひとり、#6 松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)は予選から速さを見せたが、関口と同じように赤旗中断による不運があり、予選12位、決勝も12位という結果にとどまった。次戦以降、彼らの巻き返しにも注目が集まる(ただし#15 福住はFIA-F2との日程重複で、SF第2〜4戦は欠場予定)。

より一層白熱した展開になっていきそうな今季のスーパーフォーミュラ。次戦第2戦は5月12〜13日に大分県のオートポリスで開催される。

開幕戦をポール・トゥ・ウインで飾った#16 山本尚貴。《写真提供 Honda》 開幕戦をポール・トゥ・ウインで飾った#16 山本尚貴。《撮影 遠藤俊幸》 ポールポジションの自車に乗り込む#16 山本尚貴。《撮影 遠藤俊幸》 優勝直後、渾身のガッツポーズを見せる#16 山本尚貴。《撮影 遠藤俊幸》 表彰式。中央左から2位の関口、優勝の山本、3位の野尻。《撮影 遠藤俊幸》 決勝2位の#19 関口。《写真提供 TOYOTA》 決勝2位の#19 関口。《撮影 遠藤俊幸》 決勝3位の#5 野尻。《撮影 遠藤俊幸》 決勝3位の#5 野尻。《写真提供 Honda》 決勝4位の#1 石浦。《撮影 遠藤俊幸》 決勝5位の#65 伊沢。《撮影 遠藤俊幸》 決勝6位の#17 塚越。《撮影 遠藤俊幸》 予選2位だった#15 福住はマシントラブルでリタイア。《写真提供 Honda》 決勝日は3万4000人の観衆が鈴鹿につめかけた。《撮影 遠藤俊幸》 好調な出足のホンダ勢。第2戦以降もこの勢いを持続したいところだ。《写真提供 Honda》