ジャガー E-PACE P250撮影 中村孝仁

新たなコンパクトSUV、ジャガー『E-PACE』が誕生した。ライバルはボルボ『XC40』、BMW 『X1』、『X2』、それにアウディ『Q3』あたりのようである。

コンパクトSUVと言われて少々違和感を持ったのは、そのサイズ。海外で試乗してきた人の原稿では、日本で乗るにはちょうど良いサイズと記されていた。確かに全長4410mmはそれなりの手軽なサイズである。しかし、全幅1900mmはどうなのよ?という感じ。

アウディQ3は1830mm、BMW X1及びX2はそれぞれ1820mmと1825mm。少し大きなボルボでも1875mmだ。1900mmというのは1クラス上のBMW『X5』とか、ボルボ『XC90』に近いもので、これはコンパクトと評するには少し問題だと思う。それにしても最近はクルマの幅が大きくなって、日本はそれにインフラの方がついていかない。この1900mm越えのクルマだと、多くの駐車場で白線を踏んで止めなくてはならない羽目に陥り、このサイズ拡大は少し歯止めをかけて欲しいと思う次第である。

それはさておき、ジャガーの売りは美しさとスポーティーさ。実はこのデザイン、個人的には一目見て気に入った。それほど狭いところに立ち入らなかったということもあって、全幅の広さがもたらす悪影響は一つも感じず、狭いところでクルマの向きを変えてみても、それほど苦痛は感じなかった。

何より、初めてこのジャガーデザインを纏って『XF』がデビューした時は、そのグリルデザインについて、つまらない何の変哲もないデザインだと思っていたのが、『F-PACE』やこのE-PACEを見ると、SUVのスタイリングまで見越してグリルデザインをしていたのか、と思うほど、SUVデザインにはしっくりとくる。もっと驚いたのは、このE-PACEのデザインは何と『Fタイプ』にインスパイアされたという説明があったが、それは少々言い過ぎであろう。まあ、イアン・カラムが言っているというのだが、それは話の盛り過ぎ。でも、スポーティーでまとまり感のあるスタイリングに見える。

今回試乗したのは本邦初となる、ガソリン仕様のインジニウム2リットル直4エンジン搭載車。これまでディーゼルだけだったインジニウムに、待望のガソリン仕様がデビューしたというわけで、今回の249ps仕様に続き、300ps仕様のP300も追って追加される。勿論ディーゼルの設定もありだ。ボルボなどがディーゼル導入の予定がないといっているのとは対照的である。

正直、インジニウム・ガソリンエンジンには大きな期待を寄せていた。元々ディーゼルでも同セグメントのエンジンとしては最良の部類に入るだけに、ガソリンでもさぞや良いエンジンに仕上がっているのではと考えていたが、その予想は大当たり。上から下までまったく淀みなく吹け上がる様は、まさにスポーツカー的である。そういえばFタイプにも300psの直4インジニウム4気筒が搭載されるから、その性格は押して知るべし。だから、E-PACE、かなり速い。とにかく全域で軽快で、まさに胸のすく加速フィールを示してくれる。

そしてもっと驚かされたのはその足。昔、ジャガーの足と言えば古き良き時代の『XJ』に代表されるしなやかな乗り味で、猫足と評されたこともあったが、今その猫はどこかに行ってしまったものの、E-PACEはサスペンションの動きが手に取るようにわかるほど、良く動く。そして強固なボディと相まって、あらゆる路面状況を非常に忠実にドライバーに伝えてくれる。それにステアリングはSUVとしてはかなりクィックな部類に入るから、まさにスポーツカー風の動的性能を持ったSUVといえよう。

ラゲッジスペースもクラス最大級なんだそうである。見た目にはそれほどでもない印象であったが、最大1234リットルだから、かなりのものだ。つまり新しいE-PACEはカッコ良さと、ハイパフォーマンスと、高い機能性を兼ね備えたコンパクトSUVということになる。デビューイヤーだけのファーストエディションのお値段は764万円と、ちょいとコンパクト枠には収まらなかったようだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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