アルファロメオ ジュリア クワドリフォリオ撮影 中村孝仁

『ジュリアスーパー』、『ジュリアヴェローチェ』と来て、最後に試乗したのが、この『ジュリア・クワドリフォリオ』である。同じ格好をしていて、値段が倍?な〜ぜ〜?となったのだが、乗ってみればそれは半分理解できる。

何故半分か?理由は個人的にはまだ100%、倍とは認めたくない(ジュリアスーパーに対して)部分が残っていたからである。ではスーパーに対してどこがどう違うか。これは正直いっぱいある。

そもそもエンジンは3リットルV6ツインターボだ。パワーも510psと、スーパーに比べたら倍以上である。それに、どうやらフェラーリのV8から2気筒をカットダウンしたV6のようで、掟破りの90度V6というレイアウトである。

カーボンの使い方もハンパない。インテリアでもシフトレバー周りから、ドアノブ周辺、それにインパネにカーボン。エクステリアではリアスポイラーがカーボン。ただし見えているのはこれだけで、実はルーフもボンネット裏もカーボンである。と、豪勢にお高いパーツを使いまくった結果が、倍以上のお値段ということになるのだが、走ってみるともう少し、倍以上のお値段の理由がわかる。

まず、驚くべきは、スーパー、ヴェローチェを含めた3種のジュリアの中で、こいつが一番乗り心地がいい。

このパフォーマンスだから、さぞかしい硬い足を想像しがちなのだが、その逆。しっかりと足が動いている印象も強い。もっともお硬い足をお望みなら、モード切り替えノブのてっぺんに付くダンパーのマークを押せば、お望みの硬い足が出現する。でもこれ、都市内の速度域では使いたくないレベルの硬さだ。

そのモード切り替えのノブにも新しいモードが。つまり、d、n、aの3つに加えてraceというモードが加わる。いわゆるトラックモードで、オーバーブースト機能が有効になって、エクゾーストノートをよりレーシーに…と書かれているのだが、このクワドリフォリオ、元々3500rpmを超えたあたりから、ダイナミックモードに入れておいても結構な凄まじいサウンドを奏でるから、敢えてraceにしなくても、V6サウンドは十分に堪能できる。それにセーフティデバイスも遮断されるから、一般道での使用はあまりお勧めできない。試しにraceにしておもいきっりアクセルを踏んだら、リアのタイヤが見事に空転して暴れた。

流れに乗って普通に走る時は、まあどうってことない普通のセダン。つまり、そのパフォーマンスを内に秘めながらも、日常生活に不満のない走りは可能だ。だから前述したように邪悪な性格が姿を現すのは、おおよそ3000rpmを超えて、V6サウンドが高らかになるあたりからである。

まあ、この領域に入るとドライバーはかなり忙しくなるし、そもそも、その領域で走れる一般道は存在しないから、ドバッと踏んですぐに戻さざるを得ない。そうした点ではハイパフォーマンスセダンの宿命と言えば宿命(日本の路上での話)なのだが、アルファがライバルのハイパフォーマンスセダンより楽しめるのは、その異様ともいえるクィックなステアリングのおかげ。これでスピードは遅くても凄まじく速くドライブしている印象が作り出せる。

残り半分、倍とは認めたくない理由は、やはりクルマの出来に由来する。

スーパーの試乗でも書いたが、そもそもナビを含むインフォテイメント系の出来が良くない。ナビはスマホでどうぞ、というのは500万円レベルのクルマでギリギリ許せたとしても、倍払ってそれかよとなるのはユーザーとしての心情だろう。それにこれもトランクは狭いし、リアシートも狭いときて、おまけにスーパーではトランクスルーが可能だったリアシートは、剛性確保のためか固定式とされ、益々機能性が損なわれている。ここまで来るとさすがに、いくらフェラーリ由来のエンジンだろうが、カーボン多用していようが、費用対効果という点ではいかがなものかという考えがどうしても強く先行してしまう。

まっ、1000万円級のクルマを買う人にはそんなものあまり関係ないのかもしれないけれど…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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