フロントからスッと向きが変わり、グイグイ曲がる。グリップ状態を感じ取りやすく、突然スリップなんていう不安もないから安心してさらに車体を寝かせていける。
ブリヂストンのスポーツツーリングカテゴリー用新作タイヤ『BATTLAX SPORT TOURING T31』(以下、T31)だ。
試乗したのは伊豆・修善寺にある日本サイクルスポーツセンターの自転車用コース。1周5kmのクローズドコースは道幅が狭く、タイトコーナーの続く道のりはツーリング先で出くわすワインディングによく似ている。
比較用にと、従来モデルとなる『BATTLAX SPORT TOURING T30EVO』(以下、T30)を履いた車両と交互に乗った。T30でも充分なグリップ性能を感じたが、乗り比べるとT31は初期旋回力、接地感、衝撃吸収性の良さ、すべてでT30を上回る。
コースには橋の段差や路面のひび割れ、濡れた葉などが落ちている区間もあるが、不安なくアクセルを開けていけた。路面からの衝撃を受けてもT31は落ち着いていて、急激な突き上げを体感しようと速度を上げても車体は安定しきったままだ。
このタイヤの持ち味は高いウェット性能にある。写真はドライになってから撮影したものだが、試乗開始時は前日に降った雨が残り、濡れた路面を走ることもできた。そこで車体を深めに寝かし込んだり、路面の荒れた部分であえてブレーキを強くかけてみたりしたが、タイヤはしっかり路面をグリップしていた。
その理由は溝、トレッドパターンにある。ショルダー部では溝の割合を増やし、旋回時の排水性を高めている。そしてセンター部では溝の割合を減らし、スポーティにハイアングル化。ブロック剛性が高まり、雨天時の制動距離を短縮させることに成功しているのだ。
コンパウンドも進化していて、フロントはシリカの分散を分子レベルで改良。荷重時にゴムの分子が動きやすい、つまりゴムの柔軟性がアップし、特に低温時(ウェット)の路面への食い込みが良くなった。
リアは独自の「3LC+CAP+BASE」構造を採用。コンパウンドをセンターとショルダーとで分け、中央のコンパウンドがサイド部の下へも潜り込む。これでコーナリング時の安定性を確保している。
路面が完全に乾いてからはコーナーが楽しくて仕方がない。ショルダー部のたわみが適度に感じられ、路面をしっかり捉えて離さない感覚が明確になっていき、ペースがどんどん上がっていく。
急な天候変化でも不安を感じないウェット性能と、ドライでの高いグリップ力。ツーリング先のワインディングをアグレシッブに走れ、雨が降ってきてもタフに走りきれる。『BATTLAX SPORT TOURING T31』はユーザーの欲張りな要望に、見事なまで応えた。
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。
【ブリヂストン BATTLAX SPORT TOURING T31 試乗】不安なく車体を寝かせていける…青木タカオ
2018年03月20日(火) 16時00分
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