2日目総合トップタイムの#6 松下信治(のぶはる)。《撮影 遠藤俊幸》

13日、全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)の鈴鹿公式合同テストは2日目(最終日)を迎え、午前午後総合のトップタイムは今季新人の松下信治がマークした。他にも今季の新顔ドライバーたちがタイムシート上で存在感を示したといえる一日になっている。

鈴鹿ファン感から続く“テストウイーク”も最終日、この日も鈴鹿サーキットは好天に恵まれた。前日(公式テスト初日)よりも温度条件が上がり、風向きがタイムを出すのには不向きな方向に変わったこともあり、タイム水準としては前日とのトップタイム比で1秒ほど遅くなってはいるが、とにかく今回の鈴鹿ではドライ用タイヤのソフト/ミディアム両スペックのテストを進めるには絶好のコンディションが続いた、そう言っていいだろう。

2日目の出走マシンは前日より1台減って18台。世界耐久選手権(WEC)に関する日程的都合で#18 小林可夢偉は既にサーキットを発っており、所属チームのcarrozzeria Team KCMG(エンジンはトヨタ)も前日までで今回のテストを切り上げている。VANTELIN TEAM TOM'S(トヨタ)も#36 中嶋一貴が同じ状況にあるが、こちらは2010年王者ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラを代役起用してテストを続行。

前夜にB-Max Racing team(ホンダ)の今季シート獲得が決まった#50 千代勝正は、晴れて正ドライバーとしてのテスト臨戦となった。そして今季ドライバー未決の最後の1台、UOMO SUNOCO TEAM LEMANS(トヨタ)の#7にはピエトロ・フィッティパルディが初搭乗。ピエトロは1972、74年のF1チャンピオン、エマーソン・フィッティパルディさんの孫である。

走行セッションは2回で、午前が9時〜11時、午後が3時〜5時10分(午後は10分延長)。午後のセッションはオーバーテイクシステム(OTS)も5回使用可能となり、主にセッション最終盤に各車がベストラップを記録しているが、そのなかで午前午後総合トップタイムをマークしたのは今季新人の#6 松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)だった。

松下のタイムは1分37秒002。4位までが0.089秒差という“いかにもSF”な僅差接戦を制す格好となったが、松下のベストタイムは最終盤より少し前に記録されている。最後の最後は小刻みにピットイン/アウトを繰り返していた印象で、松下担当の吉田則光エンジニアに訊くと「タイヤのセット数的にもう残りもなかったので、少し早めにアタックをして、あとはスタート練習などをしていました」という状況だった。

トップタイムとはいえ、松下には必ずしもすべて満足いく内容だったわけではないようだ。ただ、そこは「伸びしろだと思います」とポジティブに分析しつつ、さらに「P1(ポジション1)は誰もが常に目指しているものではありますけど、これを予選で獲らないと意味がない。ここで油断している場合じゃないことは重々、承知しています」と、本番でのさらに厳しい接戦状況もしっかり見据えている。

だが、順調であることもまた確かな模様。「自分でやりたい項目にはチェックを入れていけている状況ですから、次の富士テストでそれが全部埋まるようにしたいと思います」。開幕戦鈴鹿は300kmの長距離戦になる。「そこは未知ですけど、なんとかなると思いますし、自信はあります。クルマはテスト中、常にいいレベルにあったので、それを予選で発揮するためにエンジニアと話してうまくやっていきます」。

昨季までGP2〜FIA-F2を3シーズン戦ってきた、ホンダF1候補生のひとりである24歳の松下。今季SFにおける注目株が、まずは期待感高まるキックオフを演じた。観る方も先が楽しみになってきたといえよう。

松下以外にも、この日は新顔ドライバーが存在感を示したといえる一日だった。午前午後総合の2番手タイムをマークしたのは、松下とは同学年にあたる24歳で、今季が3年ぶりのSF復帰になる昨季GT500王者 #20 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)。3位にベテランの#64 N.カーティケヤン(TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)を挟み、4位には松下同様にホンダF1候補生のSF新人で今季はFIA-F2にも参戦する21歳、#15 福住仁嶺(TEAM MUGEN/ホンダ)がつけた。

また、前日の走行後に今季のシート獲得が決まった新人の#50 千代が午後セッションの12位に入り、「いろんな方向性を試して、最終的にいい方向性が見つかって真ん中あたりの順位に入れました。(実質)初日としては良かったと思います」と語れば、日本に来たのが初めての#7 フィッティパルディも「ファンタスティックだね。レースにも出てみたいよ」というインプレッションのマシンで午後13位。これも健闘だろう。

もちろん、これら新顔勢の躍進には“テストのタイムシート上は”という但し書きが付くし、チャンピオン経験者の3人、#1 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)、#2 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)、#16 山本尚貴(TEAM MUGEN/ホンダ)が午前午後総合5〜7番手につけているあたりにはいかにも質実剛健な雰囲気が漂ってもいる。

いずれにせよ、2日間とも様々な状況下で上位タイムが常に僅差だったことから、新顔台頭になるかベテラン実力誇示になるかはともかく、やはり今シーズンも接戦が展開されていくことは間違いなさそうである。

SFの第2回公式合同テストは富士スピードウェイに舞台を移し、3月28〜29日に実施される予定。そして開幕戦は鈴鹿に戻り、4月21〜22日に開催される。

2日目総合トップタイムの#6 松下信治(のぶはる)。《撮影 遠藤俊幸》 2日目総合2番手タイムの#20 平川亮。《撮影 遠藤俊幸》 2日目総合3番手タイムの#64 カーティケヤン。《撮影 遠藤俊幸》 2日目総合4番手タイムの#15 福住仁嶺。《撮影 遠藤俊幸》 2日目総合5番手タイムの#1 石浦宏明。《撮影 遠藤俊幸》 2日目の午後セッション12番手タイムの#50 千代勝正。《撮影 遠藤俊幸》 2日目の午後セッション13番手タイムの#7 フィッティパルディ。《撮影 遠藤俊幸》