トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》

僕らが親しみを込めてアルヴェルと呼ぶこのモデルの顔つきは、先代あたりから威圧感が増している。その攻撃的でありひと目でアルヴェルとわかるルックスは、新型になりさらに個性的になった。

『アルファード』は、センターのグリルがさらに押し出しの強いものに。4眼を伝統とする『ヴェルファイア』は、グリルを取り囲むようなサイドの装飾が派手になった。

実はアルヴェルの意匠に関しては賛否両論あり、威圧感に対する否定派と肯定派が混在していた。だが、販売は好調だという。肯定派が多いと判断しての、さらなるイメージ強化というわけだ。もちろん、意匠変更はフロントだけでなくリアエンドにも及んでいる。

ともあれ、アルヴェルの変更箇所は、エクステリアのイメージ強化だけではない。マイナーチェンジという言葉の響きから受ける印象を超えて、本格的に手が入っている。その一つが安全機能の強化である。予防安全に関して、さらに新システムを投入しているのだ。

これまでの「トヨタ セーフティセンスP」が、第二世代の「トヨタ セーフティセンス」に進化し架装されたのである。全車に標準設定だ。予防安全の「見る」機能は、これまで同様、ミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせである。これに変更はない。だが、これまで認識できなかった昼間の自転車と、夜間の歩行者を認識できるようになった。これが目玉。トヨタの調査によると、歩行者の死亡事故の約7割は夜間に起きているという。クルマ対自転車の死亡事故の発生は、約8割で昼間。今回のシステム強化によって、大幅に事故が減ると思われるのだ。

「レーントレーシングアシスト」の新設定も時代に合っている。クルーズコントロール作動時に、車線を読み取って道路から飛び出すのを予防してくれるのだ。実際に高速道路でチェックすると、ハンドルが小刻みに修正舵を加えながら車線をキープしてくれた。反応も早いから、車線内をふらふらすることも少ない。比較的速いスピードでも、車線を守ろうとしてくれていた。次世代の自動運転を予感させる完成度だった。

その他、標識の見落としを補う「ロードサインアシスト」も加わり、「先行車発信告知機能」も備わる。このところスマホ時代の弊害で、信号待ちなどで先行車が発進したことに気づかず、後続車に迷惑をかけるドライバーが少なくない。そんなドライバーにはありがたい機能である。追加された安全機能はそればかりではない。「リアクロストラフィックアラート」は、数台が並んだ駐車場から後ずさりするさい、後方の障害物を広い範囲で認識する機能だ。「ブラインドスポットモニター」は、横後方の見づらい部分も認識してくれる。さらには、夜間のハイビームでは、先行車や対向車の照射だけを切り取ってくれる。迷惑をかけずに、ハイビーム走行ができるというわけだ。このような機能も満載なのである。

アルヴェルは、威圧感の強いルックスで人気の高いモデルだが、一方で安全性にも磨きをかけているのだ。特に、自らを守るだけでなく、対向車や先行車や、あるいは歩行者や自転車への優しい配慮が印象的だった。そのルックスとの対比が面白い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

トヨタ ヴェルファイア《撮影 吉田瑶子》 トヨタ ヴェルファイア《撮影 吉田瑶子》 トヨタ アルファード/ヴェルファイア 試乗会《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 トヨタ・アルファード《撮影 吉田瑶子》 木下隆之氏《撮影 吉田瑶子》