埼玉県「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」座長・日本大学理工学部・稲垣具志助教《撮影 中島みなみ》

「高校生活にバイクは不要」をスローガンに、最も強固に「3ない運動」を堅持してきた埼玉県の交通安全教育が変わりつつある。

さいたま市内で開催された「自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」(会長=稲垣具志日本大学理工学部助教)は、2年以上に及ぶ教育関係者の議論の末、「3ない運動」に変わる新たな教育指導要項の制定を含めた提言を具体化した。今年度中にも委員会名で「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する報告書」として、埼玉県教育委員会に提出される予定だ。

埼玉県の3ない運動は、1981年に指導要項の中に位置づけられた。この方針を変えることの困難さは、会議冒頭の稲垣会長の発言の中に現れている。

「これまで8回、15、6時間議論してきた。委員も話しているが、埼玉県は高校生の二輪車の安全な利用を担保するための課題に丁寧に向き合い、きちんと議論している。一方で高校生本来の生活を送る理想像が崩れることがあってはならないという意見もあった。変えようとするのであれば覚悟を持って臨まなければならないという重要な視点もいただいている。報告書のとりまとめに向かっていきたい」

報告書には、これまでの指導要綱の教育成果を認めながら、無許可で運転免許を取得した生徒に十分な交通安全教育を実施することができていないという課題を上げて、「高校生の自動二輪車等に関する指導の在り方につちえもいわゆる『三ない運動』を維持していくのではなく、社会環境の変化に整合した進化をさせていかなければならない」と、方針転換を求めた。

報告書の提言では、新たな方針に沿って、新指導要項の制定、免許取得者に対する安全講習の実施、校内での免許取得の諸手続き、保護者の責任の周知など具体的なスキームについても言及されている。

報告書案は昨年12月18日の第8回の会議で採択される予定だった。第9回でも各委員の発言が続いている。