高齢者が当事者となって発生する重大事故はここ数年で増加傾向にあるが、またしても発生してしまった。被害者となったのは3学期の始業式に向かうために自転車に乗っていた2人の高校生だ。

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9日午前8時25分ごろ、群馬県前橋市内の県道を走行していた乗用車が対向車と接触。その弾みで道路右側の路外に逸脱し、路側帯を走行していた自転車2台と次々に衝突する事故が起きた。自転車の女子高校生2人が重体となっている。

群馬県警・前橋署によると、現場は前橋市北代田町付近で片側1車線の直線区間。交差点で右折待ちをしていたクルマに対し、対向車線を走行してきた乗用車が接触。その後、この乗用車は対向車線を約150mに渡って逆走する状態となり、道路右側にある民家のブロック塀に衝突。この前後に路側帯を対向してきた自転車2台とも次々に衝突したという。

ブロック塀への衝突によって乗用車は横転中破。自転車に乗っていた16歳と18歳の女子高校生は近くの病院へ収容されたが、いずれも頭部強打などで意識不明の重体。クルマを運転していた同市内に在住する85歳の男も頭部打撲などの軽傷を負ったが、警察は自動車運転死傷行為処罰法違反(過失傷害)の現行犯で逮捕している。

現場は見通しの良い区間。乗用車の進行方向では信号待ち車列も発生していた。横転滑走した乗用車はこのうちの1台とも接触している。警察の聴取に対して男は「気がついたときにはぶつかっていた」などと供述しているようだ。ブロック塀へ衝突した時点でかなりの速度が出ていた可能性が高く、警察では事故発生の経緯を詳しく調べている。

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事故を起こした乗用車は最初に対向車との接触事故を起こしていたが、その後に対向車線側を逆走する状態となり、この逆走時に自転車2台と次々に衝突している。当時、乗用車の進行方向では信号待ちによる小規模な車列が形成されており、自転車との衝突後に横転した乗用車はコントロール不能のまま、このうちの1台にも突っ込んでいる。

高齢者ということもあり、認知症の有無も問われているが、「接触でパニックを起こしたことによる対向車線逆走」と同時に、状況からは「接触からの当て逃げを目論んだ逃走の果てに起きた逆走事故」を視野に入れた方がよいのかもしれない。

事故が起きた前橋市は高齢者の運転免許返納を推進する施策も積極的に導入しているとされているが、「クルマを運転したい」という欲求を持ち続ける高齢者をいかにして説得し、免許を返納させるかも今後の課題になるであろう。