日産 リーフ撮影 中村孝仁

日産『リーフ』に試乗した。試乗の前日、トヨタが2025年までに内燃機関だけで動く車種の生産をやめると発表した。何らかの形で自動車の動力源として電気が関わること。最早その流れは止められない。

◆気になる航続距離は

リーフは言わばピュアEVのパイオニアとして存在し、初代から数えてグローバルではすでに28万台を販売したそうである。そのごく初期のリーフに試乗して思ったことは、電気自動車なんて絶対に買わない!であった。その心は、あまりに心もとない航続距離に、自分のか細い神経が耐えられなかったからである。

何しろ、満充電で乗り出した瞬間、アクセルを開けると航続距離がいきなり90kmと出た。これ、ほぼガソリンタンクが空になって燃料計の赤いところに差し掛かったガソリン車の航続距離である。そんな心配をしながら車には乗りたくない。だから電気自動車なんて、買わない!という話だった。7年たって、実質的には2.5代目付近に当たる現実的な2代目は、やはり格段の進歩であった。

少なくとも航続距離に関して、最初に試乗したモデルでは充電状況81%で、航続距離228kmであったし、アクセルを踏んだところでいきなりガタッと航続距離が落ちることもなかった。まあ、満充電で260〜280km程度というのが現実的な航続距離だと思う。(JC08モードでの航続距離は400km)まあこれだけ走れば家族を乗せて1日ドライブしたところで、余程遠出をしない限り、何とか帰って来れそうだ。因みに2台目の試乗車は充電状況97%で、走行可能距離260km、ただしエアコンを入れるとマイナス59kmと表示され、エアコンスイッチを入れた瞬間に航続距離は201kmに落ちた。やはり電気自動車にエアコンは大敵である。

ひとつ間違いないことは、電欠を気にしてか走りそのものがドライバーの自制によってマイルドになること。そして節約志向のみならず、運転そのものも大人しく走る。これ、公道試乗をさせてもらった自分が、電欠を気にする必要などまるでない、たった40分の試乗ですら、全開で加速したのはたった一度だったことを考えても、多分皆さんそんな気分になるのではないかと考えた。

新しいリーフには、『セレナ』から導入されている「プロパイロット」や自動パーキングシステムの「プロパイロット・パーキング」などが新たに装備されているのだが、如何せん試乗したのが富士の裾野だし、時間は僅か40分×2という短さだったので、そうした付属のデバイスに関しては試していない。

だから、純粋にパフォーマンスやハンドリング、静粛性。それに『ノートe-パワー』に続く、eペダルの存在とその効果についてのインプレということになる。

◆身をもって感じた走りの進化

まずパフォーマンスだが、先代に比べるとやはり顕著にパワフルで、元々電気自動車は走り出しから最大トルクを発揮してくれる特性上、先代でもなかなか鋭い発進だと思っていたが、その性能はさらに先鋭化されているように感じるし、何よりとことん静か。初代の場合、駆動系の音は全然気にならないが、シャシーがガッカリでロードノイズの侵入や、音ではないけれど、ハンドリングも全然楽しめる類のものではなかった。

そこへ行くと今回のモデルは、だいぶ静粛性に力を入れたと主査の磯部博樹氏が強調するように、身をもって感じることが出来た。

問題のeペダルである。ノートe-パワーの時はこれは面白いと思って乗ることが出来た。ノートの場合、エコ、もしくはSモードで強烈な回生が効くeペダルの雰囲気を味わえるのだが、リーフの場合はセンターコンソールにつくeペダルスイッチを手前に引くことで、強烈な減速Gを発する。因みにデフォルトはノーマルだから、このスイッチを操作しない限り普通に走る。

eペダルを体感するために、ゴーカートのサーキットを走った。意図的にシケインを作ったりしてストレート部分を少なくし、出来るだけeペダルを体感出来るように設定されていた。本気でサーキットを攻めるわけではないので、少しブレーキングを長くとれば、ワンペダル走行は全く問題なくできる。ノート同様に新しい走り方を堪能できるのだが、減速Gは本来ノートより大きくなっているというのだが、そう感じさせてはくれなかった。少し慣れたら今度はコーナーを攻めて走るかなり本気モードでeペダル走行に挑戦。ここでも、止まり切れなくて、フットブレーキのお世話になったのはたった1回きりである。今回のeペダルはアクセルオフで実はメカニカルなブレーキペダルも若干介入しているそうで、そのためにちょっとしたスロープに止まってもクルマは完全停車するという。

◆答えはやっぱり「ノー」

さて、では電気自動車を買う気になったか?。答えはやっぱりノーである。確かに航続距離は増えたし、日常的に使う利便性も高く、家庭でもインフラとして使えることなど、面白い側面もある。でも、40分の充電で8割の復帰。つまり航続距離が心もとなくなったら、30分以上のピットストップを強いられる。たまたま食事時間とか、コーヒータイムとかなら、そのくらいの時間はすぐに潰せる。でも、そううまくいくかなぁ?というのが僕の答え。高速上にも充電施設はいっぱいありますというけれど、1か所で充電できるクルマはせいぜい2台程度。ガソリン車のように2~3分、長くて5分が許せる限界。だから個体電池が実用化されるまで、僕が電気自動車のオーナーになることはないと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 :★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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