大王製紙が展示したCNF複合樹脂を使った自動車部品《撮影 山田清志》

今回の「エコプロダクツ2017」ではセルロースナノファイバー(CNF)が目玉の一つで専用のコーナーも設置され、その周辺には王子HD、日本製紙、大王製紙といった製紙会社が軒を連ねた。なかでも力が入っていたのが大王製紙だ。

ブース内は文字通りCNF一色で、白衣を着た社員が訪れる来場者に熱心に説明していた。CNFは植物由来の素材で、植物繊維を化学的、機械的に解きほぐしたものだ。繊維1本の直径が数ナノ〜数十ナノと非常に細く、鉄の5分の1ほどの軽さで強度が5倍以上もある。しかも、透明で熱を加えても膨張しにくいほか、粘りを出すこともできるという。そのため、夢の素材とも言われている。

「これまでCNFを使った製品はトイレクリーナー、紙おむつ、ボールペン、スピーカーぐらいしかなかったが、これからはその用途がどんどん広がっていくと見ている。当社としてはCNFだけの原料供給メーカーにはなりたくないので、今回の展示会では自動車部品をつくって披露することにした」と大王製紙関係者は説明する。

なんでもCNFを樹脂に10%混ぜることで、樹脂の弾性率が1.3〜1.4倍に向上し、強度も1.1〜1.2倍に上がるという。そのため、構造材料部材の薄肉化が可能で、軽量化が期待できるわけだ。

しかも、既存の成型機で従来と同じように製造できるのだ。その点が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と大きく違い、リサイクルについてもCNF複合樹脂のほうがCFRPよりも格段に簡単だ。砕いて溶かせば元の物性に戻るとのことだ。

「ただ、現状は供給に問題があり、価格も炭素繊維よりも高くなっている。しかし、量産化が進めば、炭素繊維よりも安くできる。なにしろ、日本には森林資源が豊富で、植林をすればまた木が生えてくる」と大王製紙関係者。

同社では何とかして自動車業界に食い込もうと自動車部品を試作して展示したわけだが、世界の製紙会社も状況は似たり寄ったりで、各社CNF複合樹脂の開発を進めている。今後、製紙業界の勢力図がCNFによって大きく変わるかもしれない。

CNF複合樹脂の製造工程《撮影 山田清志》