JR西日本は「eQドクターT」(写真)の技術をベースに新幹線用のトンネル検査システムを開発する。

JR西日本は11月29日、新幹線のトンネル点検作業を効率化するためのシステムの技術開発に着手すると発表した。西日本高速道路(NEXCO西日本)が保有する高速道路用のトンネル点検システムをベースに開発する。

JR西日本が運営する山陽新幹線では1999年6月、福岡トンネル内でコンクリートの塊が落下し、架線を切断して走行中の列車にぶつかる事故が発生。2002年には「新幹線用トンネル覆工表面検査システム(SATUZO)」が導入された。トンネル構造物のうち、目に見える部分の内壁コンクリート(トンネル覆工)をチェックするためのシステムで、走りながらトンネル表面を撮影する。

SATUZOは導入から約14年が経過していることから、JR西日本はNEXCO西日本の検査システム「eQドクターT」をベースにした新しい検査システムの開発を決定。このほどNEXCO西日本と共同開発協定を締結し、検査のさらなる効率化を目指すことにした。

eQドクターTは、超高解像度のトンネル覆工面撮影技術や覆工面展開図の貼り合わせ技術、自動ひび割れ抽出技術により、覆工コンクリートの状況を確認するためのトンネル覆工点検システム。最高速度100km/hで走る車からトンネル覆工を撮影し、最小幅0.2mmのひび割れを自動的に抽出してデジタル図面化することができる。撮影システムには、高解像度の画像を取得できるラインセンサカメラを採用。周辺にいる人からは見えない赤外線照明も採用しており、「目立たず安全な走行撮影」ができるという。

高速道路は路盤の横断方向の傾き(カント)が約6%以下であるのに対し、新幹線は約14%以下と大きいなどの違いがあり、カメラフォーカスや照明方式などを新幹線向けに変える必要があるとみられる。また、新幹線では他の設備診断システムとあわせて車両に搭載するため、搭載スペースに制約があるという。JR西日本とNEXCO西日本は、これらの課題を考慮して概略検討や設計検討に取り組み、新しい検査システムの実用化を目指すとしている。

山陽新幹線を走る列車。《撮影 大野雅人(GazinAirlines)》