高耐熱キャパシタ発表:ジェイテクト≪撮影 中尾真二≫

ジェイテクトは27日、温度特性が高い高性能リチウムイオンキャパシタを発表した。マイナス40度から85度までは、本体の冷却が必要ないことが最大の特徴だが、この特徴が大きな可能性を持つという。

キャパシタとは電気を一時的に蓄え、放電することができる素子、デバイスだ。バッテリーは化学変化によって電気を生み出すが、キャパシタは入力となる電気に対して、物理的に蓄え放電することができる。充電できる電力は多くはないが、高い放電エネルギーを一気に放出することができる。ハイブリッドレーシングカーでは、パワーアシストのためにキャパシタを利用したものがある。

自動運転のニーズは今後さらに高まってくると、ブレーキ、ステアリング、トランスミッションの制御アクチュエーターの出力が問題になる可能性がある。たとえばジェイテクトが得意とする電動パワーステアリングだが、大型車の自動運転に応用しようとすると大きなモーターか大出力のバッテリーが必要となる。同社では、12Vの電源では大型車など高負荷が想定される用途に出力不足が懸念されるとして、電動パワーステアリングの補助電源システムを開発していた。

考えたのは、キャパシタと充放電コントローラを利用した補助電源システムだ。通常は12Vのバッテリーで電動パワーステアリングのアクチュエータ(モーター)を充放電コントローラーを介して制御する。高負荷時には、充放電コントローラがキャパシタの電力を利用して電圧を18Vくらいまで上げる。これにより、大型車両でのステアリング制御や、レベル3以上の自動運転における急カーブや急ブレーキへの対応も期待できる。また、メインのバッテリーが故障した場合のバックアップ電源としても機能させることができる。

上記のシステムを開発していたのだが、バックアップ電源として利用した場合、長時間でないとしてもキャパシタの耐熱温度に課題があったという。この課題に取り組む過程で生まれたのが、今回発表された高耐熱リチウムイオンキャパシタだ。ー40度から85度という動作温度範囲は、通常の車室内の環境なら冷却など温度管理が必要ない。また、出力電圧を制限することで、105度になっても充放電性能を維持できるという。

温度管理が不要ということは、その分を純粋にキャパシタの容量を上げることができる。容量が増えるだけでも、その用途はかなり広がるという。すでにジェイテクトには、自動車業界以外、電力業界、工作機械、ロボットなど多数の業界から問い合わせが国内外から届いているという。例えば、電動アシスト自転車、建設機械のパワーアシスト、燃料電池車、レーザープリンタ、太陽光発電などへの活用が期待されている。小型コミューターならメイン電源としての可能性もあるそうだ。

予備電池やバックアップ電源としての用途もある。自動運転車は、高い稼働率、耐故障性が要求されるが、メインバッテリーのトラブルに対して、キャパシタを利用することでECUなどの電源断を回避できる。

自動車業界以外での活用が期待される高耐熱リチウムイオンキャパシタだが、ジェイテクトでは2019年に量産を開始したいとする。

キャパシタを沸騰した電気ポットの中に。電圧を下げれば100度は問題ない≪撮影 中尾真二≫ 高耐熱キャパシタ発表:ジェイテクト≪撮影 中尾真二≫ 高耐熱キャパシタ発表:ジェイテクト≪撮影 中尾真二≫ 高耐熱キャパシタ発表:ジェイテクト≪撮影 中尾真二≫ さまざまな産業が注目する≪撮影 中尾真二≫