千代田化工建設が推進中の水素供給事業。ブルネイからMCHとして日本に水素を運ぶ。

様々な産業界のプラント技術や素材が集まる展示会のINCHEM TOKYO(21〜22日、東京ビッグサイト)。これまで色々な分野のプラント建設を手がけてきた千代田化工建設のブースには、燃料電池車の燃料となる水素の供給事業についてパネル展示があった。

それは資源エネルギー庁とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援によるプロジェクトで、大きく分けて3つの仕組みがある。

1つはブルネイからの水素輸送プロジェクトで、天然ガスを輸入し国内で水素を取り出すのではなく、ブルネイ国内で水素を取り出し、日本へ運ぶというものだ。これにはトルエン利用による水素キャリアを利用するもので、同社は液体化した水素、「スペラ水素」(成分的にはMCH)と呼んでいる。トルエンは自らの700倍も水素を溜め込める性質をもっており、これを利用することにより水素の容積を500分の1にすることが可能なのだ。

現時点でもFREA(福島再生エネルギー研究所)でトルエンを用いた水素キャリアの実証実験が行われているが、千代田のプロジェクトはここからさらに一歩進んだ実用段階に入るものと言える。

2つめは自然エネルギーで発電した電力を使い、水を電気分解して水素を作り、トルエンに結合させてMCH(メチルシクロヘキサン)として貯蔵、運ぶのもベースの技術は同じ。

3つめはMCHを水素ステーションに運んで、水素を取り出すプラントの小型化だ。これにより低コストで安全な水素ステーションを作りやすいものとする考えのようだ。

トルエンは水素を取り出せば、また再利用できるので、タンカーもタンクローリーなどを往復させる行程にも無駄がない。

同プロジェクトは2020年の実験開始に向けて着々と進行中。このあたりから水素社会の実現に向けた取り組みが本格的に加速しそうだ。

風力や太陽光発電などの出力が不安定な電力をMCHとして貯蔵して利用する。 MCHを日本各地の水素ステーションで利用するための脱水素化装置の開発もプロジェクトの1つだ。