展示会場奥に設営された『スマートシティ・パビリオン』

カナダ・モントリオール市で2日まで開催された「第24回ITS世界会議」。テーマとなったのは「スマートシティを加速する統合モビリティ」。展示会場には専用パビリオンを設け、各都市が目指す次世代の統合型モビリティソリューションの考え方を見ることができた。

統計データによれば、2025年までに世界人口の約58%(46億人)が都市部に住むと予測。2050年までに都市人口は倍増し、それは毎年ニューヨーク市7つ分に相当する都市が増えていく計算だ。今回のITS世界会議では、そんな中で統合型モビリティの未来を政策の上でどのように進化させるか、進化するIoTとモビリティがどう関わっていくのか等が話し合われた。

ただ、ITSの進化は人々に多くのメリットを生み出す一方で、インフラの整備を司る都市行政側としてはその負担もかなり大きい。当然ながら、その対応に際して取捨選択が迫られる。本当に人々を幸福にするためにはどれを選ぶべきなのか、その議論は日々尽きないという。このパビリオンはそうした考え方を都市において展開する事例を紹介する場として用意された。

パビリオンに出展していたのは、モントリオール市(カナダ)の他、オハイオ州コロンバス(米国)、クライストチャーチ(ニュージーランド)、コペンハーゲン(デンマーク)、シンガポールの5都市。

そんな中でクライストチャーチ市は、今年9月より自動運転機能を搭載するコミュニティバス『Ohmio』の実証実験を市内で開始したことを披露した。OhmioはHMIテクノロジー社(フランス)の子会社Ohimio Automationが開発するもので、目的地付近に到着した市街地での“ラストマイル”として活用を想定。車両には6名ほどの人員が乗車できる。

クライストチャーチ市は、2010年9月とその半年の2011年2月に二度にわたる巨大地震に見舞われ、市内の交通機関は完全に麻痺状態に陥った。インフラの復興を遂げようにも度重なる災害に手の施しようがない状態が続いていたわけだ。そんな復興活動の中で効率的な市街地での交通手段を模索していた市は、自律運行できるOhmioにたどり着く。自律で走行できるOhmioであれば、インフラを専用で整備する必要はないからだ。

クライストチャーチ市長リアン・ディエル氏はオープニングセレモニーで開催されたプレナリセッションに登壇し、地震での体験を語った上で、「このサービスは新たなテクノロジーのテストケースとなる。我々はここで得た経験を学び、大事に育てていかなければならない」と実験の意義を述べた。クライストチャーチ市ではこの公道実験を重ねることで、規制当局の承認を得て正式にサービスインしていきたい考えだ。

パビリオンに出展したシンガポール パビリオンに出展した米国オハイオ州コロンバス クライストチャーチ市が実証実験を始めた無人走行できるコミュニティバス「Ohomio」 「Ohomio」は連結走行を想定する 2010年以降、クライストチャーチ市は二度にわたる巨大地震に見舞われた プレナリセッションでじゃ統合型モビリティの今後の方向性が話し合われた。左から二番目がクライストチャーチ市長リアン・ディエル氏