SBドライブの佐治友基社長(24日、墨田区)《撮影 中島みなみ》

各地で自動運転バスの実証実験を行っているSBドライブの佐治友基社長は「日本では10年後までに1万台の自動運転バスを流通させたい」と、語った。この見通しは「保守的な目標だ」とした。

その主な理由は、国内のドライバー不足だ。「日本ではバス会社は自動運転を早く作ってくれという。仕事を奪われることよりも、仕事を続けるためにドライバーが足りないので、それを早く埋めてほしいという気持ち」。

さらに、自動運転とドライバーはすみ分けて存在し続けると、予測した。「少なくとも30年〜50年、自動運転と手動運転は混在する。完全に自動運転だけになるという時代はこない。なぜかというと、手動運転のほうが安かったり、理に叶ってたり、安全だったりするところが、まだまだいっぱいあるから。大量に輸送できる幹線交通は人が運転し続け、少数を運ぶラストワンマイルは自動運転になる。2つのビジネスはカニバリゼーション(食い合うことを)しない」。

その理由を佐治氏は、鉄道の列車の乗務員を例に挙げて説明した。「電車はレールの上を走っているから自動運転でいいはずだが、いつまでも乗務員はいなくならない。これは技術の問題じゃない。一度にたくさんの人を運べるビジネスモデルでは、乗務員が1人乗っていてもコストは変わらない。だったら1人乗せておいたほうがいいから、絶対にいなくならない。でも、オーストラリアの鉱山鉄道は無人で運行されている。それはいざという時に乗務員を助ける。コストをかけずに命を守るため」

自動運転の普及には、交通規制などの新しい対応が必要だが、その規制についても評価した。「日本は(海外と比較して)早くもないが、遅れてもいないルールメイクがされている。警察庁ではオープンに自動運転の実験ができるガイドラインを公表していて、それに民間が応えなければならないフェーズにきている。レベル4、レベル5のコンセプトの車両を公道で実験させることができる」。

ただ、その先の商用化については、こう注文も付けている。「実用化、商用化のためのガイドラインは、アメリカでも中国でもなく日本がいちばん早く必要としているはず。それは今まさにドライバー不足で困っているから。ほかの国はウーバーなどのパワーで若い人が運転してくれるから移動できるが、日本は自動運転がないと移動できない人が、本当に増えてくる。でも、そのリスクを取ることは日本はなかなかできていない。各国の例を見ながら省庁で話している段階」。

24日に東京都墨田区で開催された「フューチャー・モビリティ・サミット」(主催=日本自動車工業会)の「モビリティのシェア」をテーマにした複数の関係者との会談の中で述べた。