N-BOX G・EX ターボ Honda SENSING《撮影 会田肇》

ホンダ『N-BOX』が9月1日、初のモデルチェンジを遂げた。しかし、ちょっと見た目にはわからないぐらいキープコンセプトで登場したわけだが、プラットフォームからボディまですべてが新開発。中でも劇的に向上したのはその乗り心地だった。

同乗した妻から真っ先に飛び出たのは、「このクルマ、すごく乗り心地がいい!」という声。妻は普段から2年前に購入したダイハツ『ムーヴ』を愛用しているが、購入当初こそ軽自動車として十分に快適な乗り心地を味わっていた。ところが、最近は荒れてしまっている道路を走ると、路面の段差から来るショックを吸収し切れていない状況に不満を感じていたらしかった。それが新型N-BOXでその道路を走ると、そのショックがかなり抑えられていたのに驚いたというわけだ。

この日は助手席での同乗だったが、自分もそれをハッキリと感じていた。そのぐらい、劇的に乗り心地が向上しているのだ。開発データを見ると、先代比で80kgの軽量化を果たしたとしながらも、実はボディやシャシーでは150kgもの減量を達成していたという事実がある。そこにホンダセンシングをはじめ、新型になって新たに搭載された装備分70kgが加わったことで、結果として80kgの減量にとどまったというのだ。ただ、軽量化は一歩間違えば乗り心地にマイナスとなることもある。それがどうしてここまで乗り心地が良くなったのか。

試乗会で開発者が語ったことは、「軽自動車としてかなり贅沢なダンパーを搭載した」ということ。このダンパーが乗り心地向上に大きな効果をもたらしているのは想像に難くない。しかも、乗り心地がいいからと言ってコーナリング性能に影響を与えるどころか、むしろコーナーでもしっかりと粘ってくれた。だから、高めの速度でカーブに差し掛かっても思った通りのルートをたどってくれる。聞けば、これはFF車に装備したリアスタビライザーが効果を発揮しているのだという。

気になったのは、ブレーキを踏んで停止する直前の揺り戻しが少し大きいように感じたこと。渋滞路などでのストップ&ゴーのシーンではそれが特に感じられ、ブレーキの踏み方に少し気遣うようになった。ただ、これも慣れの範疇に収まってしまうのかもしれない。

振り返れば、初代のN-BOXがデビューした際、試乗会で高速道路に入るインターチェンジのカーブで、外側に振られる状況にかなり不安を感じた記憶が蘇る。その状況とは雲泥の差を感じるほど新型はよく踏ん張ってくれるのだ。N-BOXの利用シーンでは当然ながら同乗者がいることが想定される。ホンダによれば「乗り心地の良さを確保しつつ、同乗者に不安を与えることなくコーナリングが出来ること」を開発目標としたらしいが、今回の妻の声からもわかるようにその目標は十分に果たすことが出来たように思う。

会田 肇|AJAJ会員
1956年・茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。大学卒業後、自動車専門誌の編集部に所属し、1986年よりフリーランスとして独立。主としてカーナビゲーションやITS分野で執筆活動を展開し、それに伴って新型車の試乗もこなす。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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