スバル XV撮影 中村孝仁

クローズドコースのみでの試乗だった試乗会では試せなかったあれやこれやを、一週間お借りして試してみた。スバル『XV』の話である。

お借りしたのは「2.0i-Sアイサイト」。消費税込みで267万8400円。これに付け加えるとしたら、ナビゲーションと5万4000円のアドンバンスドセイフティーパッケージくらいなもの。まあ、本革シートが欲しいとか、シャークフィンアンテナも欲しいとか、物欲旺盛な人はメーカーオプション7という、全部込みパッケージをチョイスすれば21万6000円ですべて手に入る。だからナビを含め、全部込みでも車両本体価格は300万円を少し超える程度。これでアイサイトやシンメトリカルAWDなどはすべてついて来るのだから、個人的にはバーゲンプライスだと思う。

2リットルエンジンは直噴ではあるがNA。出力とトルクはそれぞれ、154ps、196Nmとなる。この点について正直に報告すれば、パフォーマンス的にはもう少し欲しい。特にトルクが…である。これは何もエンジンだけのせいではないと思う。果たしていつまで使い続けるのかは知らないが、XVは今のところリニアトロニックというCVTしかトランスミッションの設定がない。勿論マニュアルの用意もない。

このリニアトロニック、普段市街地の交通の流れに乗って走っている分には何ら悪い印象は持たないし、無段変速なのだからスムーズであることは申し分ないわけなのだが、ひとたび流れをリードして活発に走らせようとすると、これがあまりスムーズにいかないのだ。少々荒っぽいが、アクセルをバンと踏み込んだ時には一拍の間をおいてからおもむろに加速を始めるし、パーシャル状態から前車を追い越そうと高速でウィンカーを出してアクセルを踏み込んでいくような時は、加速感が漫然としている。言い方を変えると、古いトルコン車のトルコンスリップを起こしているような状態に感じてしまうのだ。

NAのガソリンエンジンは今となっては回して行かないとトルクが付いてこない。これが欧州のダウンサイジングターボエンジンだと1.4リットルでも250Nmほどのトルクを絞り出すから、ほぼ25%アップ。しかも低回転域からトルクを出してくれるので、はっきり言って走り易い。まあ、燃料はレギュラーで、この点は欧州勢にアドバンテージを持っているのだが、2リットルですらこうだから、1.6リットルは推して知るべし。来年から新表示となるWTLCモードになると、CVTのメリットは削がれてしまう気がしてならない。

新しいグローバルプラットフォームの出来はすこぶる良いと思う。単純に剛性アップを果たしたというだけでなく、しなやかさも併せ持っている。おかげで旧型比で乗り心地はかなり大きく改善されていて、快適さを増している。

試乗車にはアドバンスドセイフティーパッケージが装備されていて、ハイビームアシストが付いていた。夜間にヘッドライトをオートの状態にしておくと、対向車や前車のいない暗い夜道では自動的にハイビームにしてくれる。スバルの場合はまだ、ここまで。状況に応じて減光するアダプティブ機能はないが、暗い夜道の多い我が家周辺では重宝した。まあ、都会に住むユーザーにはあまり必要性を感じないオプションかもしれない。

アイサイトはまだツーリングアシストの最新バーションではないが、それでも十分に機能を果たし、高速でのクルージングは大幅に楽が出来る。ただ、レーンキープアシスト機能は比較的に頻繁にオフになる傾向だった。

このクルマが本当に真価を発揮するのはやはり冬場の雪道だろう。全車シンメトリカルAWDで、FWDは存在しないから比較のしようはないが、少なくともターマック路面で4輪を駆動しているというフリクションは全く感じない。とはいえ、燃費は頑張っても12〜13km/リットルだったので、今時の2リットル車としてはまあ標準的なのだろうけど、優秀とは言い難い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

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