ホンダ N-BOXカスタム《撮影 宮崎壮人》

ホンダの軽トールワゴン、『N-BOX』がモデルチェンジした。といっても、パッと見「どこが変わったの?」という感じだが、プラットフォームからボディまで新開発のフルモデルチェンジなのだ。で、意図したのはいいクルマの先にあるいい暮らし、「N for Life」だという。

その結果、先代比で80kgの軽量化を果たしたというが、実はボディやシャシーでは150kgの減量を達成、そこに新たな装備分が70kg加わったため、結果として80kgの減量になったのだという。

N-BOXとN-BOX カスタムの2タイプがあるボディ、全体形は先代と概ね同様だけれど、ディテールはまったく違っていて、雰囲気もちょっと異なる。ちなみにこの新型のエクステリアデザイン、手掛けたのは『S660』を担当したデザイナー氏だそうだ。

3気筒658ccエンジンにはNAとターボがあるが、横浜が舞台の試乗会で乗ったのは、N-BOXがNAの「G-L ホンダセンシング ベンチシート仕様」、N-BOX カスタムが「G-XEターボホンダセンシング」だった。税込み車両本体価格は前者が149万9040円、後者が194万9400円。

この手の軽トールワゴンの常で、室内の広さは前席も後席も充分。前席ベンチシートの仕様でも、前後スライドとリクラインは左右別々に可能なので、使い勝手は上々である。もちろん後席も左右別々にスライド可能となっている。

まずはN-BOXのNAに乗るが、走り出すと同時に感心したのは乗り心地が快適なことだった。試乗前のプレゼンで、新型のサスペンションにはいいダンパーを奢りました、と開発責任者が自慢していたが、ソフトで腰のある乗り心地はそのダンパーの恩恵に違いない。

しかもそれでいて、首都高のコーナーを軽く攻めてみると、このソフトな脚がけっこう粘り腰を発揮して、危なげなくコーナーを抜けていく。FWDモデルの場合、リアにもスタビライザーを装備していることも、効果を発揮しているのだろう。

小さな子供を乗せて走る若いお母さんをユーザーの典型として想定したというが、こういう不安感のないコーナリングは、そういう用途にもとても重要だと思う。

続いてカスタムのターボに乗り換えると、エンジンが58psと6.6kgmから64psと10.6kgmに強化される。通常のドライビングではNAで充分だが、イザというときに瞬発力が欲しくなるセッカチには、ターボが向いている。ターボ仕様にはCVTにマニュアルモードとステアリングパドル、それに革巻きステアリングが備わるのも好ましい。

カスタムはN-BOXの14インチに対してタイヤが15インチになり、それに合わせて脚のセッティングを変えている。そのためステアリングの感触はやや骨っぽいし、乗り心地もN-BOXほどしなやかではないが、これも決して硬すぎることはない。

N-BOXもカスタムも少し違和感があったのは、ブレーキだった。軽く踏み始めたときの効きが想定するより甘く、途中からグッと効いてくる感触なのである。これがフットワークに関する唯一の不満だったといえる。

もちろん、普通のN-BOXにもターボ仕様はある。しかもそれ、タイヤはNA仕様と同じ14インチのままだが、フロントブレーキはカスタムのターボと同じ大径のベンチレーテッドディスクに替わるというから、ヌカリはない。

というわけで新型N-BOX、よく考えられ、よく煮詰められたクルマだと思った。そうそう、両手がふさがっているときに足の動きだけで開けられるハンスフリースライドドアも、オプションで用意されているし。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★☆
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

吉田匠│モータージャーナリスト
1971年、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。1985年、同社を円満退社、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。『僕の恋人がカニ目になってから』(二玄社)、『男は黙ってスポーツカー』『ポルシェ911全仕事』『男は笑ってスポーツセダン』(双葉社)など、著書多数。

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