サカイオーベックスのカーボンファイバークロス「OVEX fabric」。見た目は普通のカーボンクロスと変わらない。

レーシングカーのモノコックやボディはもちろん、今や航空機や高級スポーティカーのボディにも使われるカーボンファイバー。エヌプラス(9月13〜15日、東京ビッグサイト)でもカーボンファイバーを使った成型品はいくつも見かけたが、今回は中間素材に目新しいものを見つけた。それは「開繊カーボン」。

開繊とは繊維を開くことで、撚られた糸を平らにすることにより、より薄い繊維とするもの。同じ厚みであれば、その分積層できるので強度に優れるのが第1の特徴。さらに薄いので成形性にも優れる。その他にも樹脂を含侵させたプリプレグの内部に気泡が出来にくいなど、メリットは数多い。

通常のカーボンファイバーは1本の糸が5〜7マイクロメートルで、それを1000〜5万本束ねた糸を織ってクロスにしているため、100マイクロメートルほどの厚みになる。それを繊維を傷めることなく糸を平らに広げることで、4分の1ほどの厚みにしているそうだ。これは福井県の工業技術センターが特許をもつ技術で、同県のサカイオーベックスがそれを利用して開繊したカーボンファイバー「OVEX fabric」を製品化したのは3年ほど前のことだ。

通常のカーボンファイバー同様、弾性率によって様々なグレードを用意している。同社は開繊してプリプレグなどを生産しており、カーボンファイバー自体は国産の素材メーカーから納入されている。これだけの素材を求めるのはF1のコンストラクターなど、世界でもトップレベルの特別な団体であることが多く、カーボンファイバー自体も世界トップレベルのクオリティを誇る日本製のメーカーを指定してくるそうだ。

一番右が12kの原糸。これを2段階に広げたのが左の開繊カーボン。繊維の量は同じだ。 一方向に繊維を揃えたUDのプリプレグ。熱可塑性樹脂が含侵されている。 開繊カーボンを使った成型品。立体的な造詣も1枚で作れ、薄く軽量、強靭な製品ができる。