フランクフルトモーターショーに出展した「AeroMobil」の空飛ぶ自動車『Flying Car』。写真は翼を畳んだ状態

フランクフルトモーターショーのテーマは「未来を体験する」だが、その中で一際目立ったのが“空飛ぶ自動車”の展示だ。クルマが空を飛ぶなんて夢のような話だが、近年はそれが現実になろうとする様々な企業が参入を果たしている。そんな夢の“空飛ぶ自動車”をショー会場で追った。

●AeroMobil

会場で最も存在感を見せ、実現が近そうだったのが、東欧スロバキアの企業「AeroMobil」の空飛ぶ自動車『Flying Car』だ。自動車の上に翼を載せたようなデザインで、道路では翼を畳んで走行し、飛行モードに切り替えると翼が左右に広げて滑走後、離陸して空を飛ぶ。飛行モードと自動車モードの切り替えはそれぞれ約3分で終了し、その切り替えはすべてフルオートで完了できるという。

パワーユニットは2.0リットルターボ付き水平対向4気筒エンジンで、自動車モードの走行ではこのエンジンは発電にのみ使い、電気モーターを使って前輪で走行する。一方、飛行モードではエンジンによってプロペラを回転させて飛行する。

サイズは自動車モードでの全長は約5.9m、全幅が約2.2m、全高が約1.5m。飛行モードでは全長約5.8m、全幅が約8.8m、全高が約1.4mmとなる。走行/飛行性能は、自動車モードの最高速度が160km/hで、飛行モードでは360km/hで飛行できる。離陸時重量は960kgで、240gまでの積載が可能だ。価格は120万〜150万ユーロ(約1億6000万〜2億円)で2020年リリース予定。既に予約販売が開始されている。

●PAL-V

自動車とヘリコプターの機能を組み合わせて“空飛ぶ自動車”としたのが、オランダの PAL-V社が開発した『PAL-V Liberty』だ。3輪のタイヤを備えた自動車で、こちらも「走行モード」と「飛行モード」が切り替えが可能。道路上ではプロペラを畳んで走行し、10分程度で切り替えられる。ドライブモードの最高速度は160km/hで、最大走行距離は1315km、燃料効率は7.6リットル/100km。フライトモードでの最高速度は時速180km/hで、最大500kmの飛行航続距離を持つ。

PAL-V Libertyには上位の「Executive Edition」と標準の「Sports」の二つのグレードがあり、価格はExecutive Editionが499ユーロ(約6600万円)前後で、Sportsが299ユーロ(約4000万円)前後を予定しているという。両者の価格差は装備の違いによる飛行性能に違いはないとのことだ。既に予約販売を開始しており、2018年末デリバリー予定だという。

●メルセデスベンツ

そして、もう一つの話題はメルセデスベンツが公開した『Volocopter 2X』。こちらは地上走行はできないが、中央部に人が乗れるスペースが用意されているため、ヘリコプターの一種と思われる。しかし、パワーユニットをバッテリーで動かすモーターとしており、その体裁はどう見ても“大きなドローン”だ。一度の充電において最大27分間飛行でき、最高速は100km/hにもなるという。

メルセデスベンツによれば、都市での移動手段を目的に開発され、無人飛行も視野に入れているとのこと。具体的な販売価格や販売時期については明らかにされなかったが、年内にも無人飛行テストを行う予定になっているという。

気になる免許については、空を飛ぶということでどの機種の場合でも専用のライセンスは必要になるとのこと。そのため、例えばPAL-Vではライセンス取得のための講習費も含めて販売している。一般ユーザーにはとても手が届きそうもないが、いずれはレンタルなどで貸し出しが可能になるかも知れない。そんな時期を楽しみに待とう。

「AeroMobil」社の空飛ぶ自動車『Flying Car』。翼を広げると幅は8mほどになる 『Flying Car』のリア。プロペラを出した飛行モードの状態。道路走行時はこれが収納される 『Flying Car』のコックピット。空を飛ぶには専用の免許が必要になる オランダの PAL-V社が開発した『PAL-V Liberty』。地上走行は3輪車として走行する 会場にはPAL-V社のテスト飛行を終えた機材も展示されていた 実際に販売される機体のサンプル機材。テスト飛行した機材より乗用車的に改良されている 『PAL-V Liberty』のリアビュー メルセデスベンツが公開した『Volocopter 2X』。満充電で27分の飛行が出来る メルセデスベンツが公開した『Volocopter 2X』