レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》

レンジローバー・ファミリーの4番目のモデルとして登場した『レンジローバー・ヴェラール』。名は体を表わすを地で行くような、何やらミステリアスなクルマだ…が第一印象だった。

“引き算の美学”とはデザインの領域で昔から言われていることだが『ヴェラール』のスリークなスタイルはまさしくそのとおり。全長×全幅×全高=4820×1930×1685mmと十分に豊かなサイズながら、控えめにすら感じるルックスはとても上品。けれどルーフとウエストラインを後方でテーパー状に絞り、アンダーラインも後方に向かってハネ上げることで、スーッと独特の“流れ”を作っている。フロントは近年おなじみの薄型グリルとライトで構成、テールはクーペのようなスリムさだ。なお“流れるターンシグナルランプ”は設定で一般的な点滅式にも切り替え可能だそうだ。

ベルトラインはボンネットと連続した一直線に引かれており、車両感覚の掴みやすさ、安心感になっている。スリークである前に、クルマの基本骨格を弁えたデザインだ。同様に運転席からフードは見渡せ、天地に潰れていようが、サイド〜後方の視界も悪くない。

インテリアは見慣れたデザインテイストのインパネが眼前に。今回は物理ダイヤルが3つだけという先進ぶりだが、横一文字のインパネにセンターコンソールが立ち上がるシンプルな構成はいつもどおり。シンプルだが上質なインパネの見本、である。

居住スペースは着座位置(高さ)を別にすれば上級セダンのよう。後席はシートクッションが案外と硬めとは感じたが、スペースは広く、ゆったりとした姿勢で着座できる。ラゲッジスペースは余分なギミックこそないものの、スッキリと十分なスペースが確保されている。

試乗車は3リットルのV6スーパーチャージャー(380ps/450Nm)搭載車。人工的な音の“演出”が入ってのことかどうかは未確認だが、回すと予期せず骨っぽい音質のエンジン&排気音が響く。これに8速ATの組み合わせだが、もちろん動力性能には不満はなく、走行モードをダイナミックに切り替えると、ステアリングやサスペンション、アクセルレスポンスが明らかにシャープさを増す。『ジャガーF-PACE』に優るとも劣らない小気味よさといったところ。

他方でコンフォートモードにしておけば、レンジローバーらしい、船に乗っているような鷹揚な乗り味が堪能できる。装着タイヤはピレリ・スコーピオン・ヴェルデ・オールシーズン M+S(サイズは255/50 R20 109W)だったが、音・振は良好で、このクルマの性能、キャラクターにマッチしていた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》 レンジローバー ヴェラール SE《撮影 島崎七生人》