ピエール・ガスリーがオートポリス戦を制した(左端は2位のローゼンクヴィスト、右端は3位の大嶋和也、ガスリーの隣はチーム無限の手塚監督)。《撮影 遠藤俊幸》

10日、全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)第5戦の決勝レースが大分県のオートポリスで実施され、今季新人で次期F1ドライバー候補でもあるピエール・ガスリー(チーム無限)が2連勝を飾った。2〜3位にはチームルマンのF.ローゼンクヴィストと大嶋和也が入っている。

2年ぶりのSF九州大会はレースウイークを通じてドライコンディションに恵まれた。決勝日は雲が出ることも少なくはない空模様で、午後1時過ぎの決勝スタート時、気温25度・路温33度と数字はやや控えめながら、やはり前日同様に陽が出た時はかなり暑い印象だった。

今回も前戦と同じく「ドライタイヤ2スペック制」のレースなので、決勝(54周)ではソフトとミディアム、両方のスペックを必ず使用しなければならない。決勝フォーメーションラップのスタートを待つダミーグリッド上、トップ10のマシンはミディアムを履いて待機していた。

そのなかで5番グリッドの#15 P.ガスリー(TEAM MUGEN/エンジンはホンダ)が唯一、“動く”。土壇場でソフトへと履きかえ、「みんなとは“逆”をいってみることにした」。後方グリッドにはソフトを履いてスタートを待っているマシンが多かったため、ピットストップした後の位置関係等も総合的に考慮して、ガスリー陣営はこの判断を下したようである。

#15 ガスリーはソフトのダッシュ力も活かして、素晴らしいスタートを切った。彼より上位にスタートを失敗したマシンがあったことも味方に、1コーナーにはポール発進の#40 野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)に次ぐ2番手で入っていく。そしてミディアムの#40 野尻、ソフトの#15 ガスリーは1秒以内の差で接近した首位争いを続けていくことに。

レースは2ストップ作戦等を含めた戦略バリエーションも各陣営が応酬し合う展開となっていった。#15 ガスリーは1ストップ作戦のピットストップを23周終了時に行なう。同じく1ストップの#40 野尻は38周目まで引っ張ってからピットへ向かうが、この時点ではタイム差的に#15 ガスリーが前に出るのは確実な状況に転じていた。そして全車のピットストップが終わったレース終盤、名実ともにトップに立った#15 ガスリーはそのままチェッカーまで走り抜き、前戦もてぎでの初優勝に続く2連勝を飾ったのである。

今季5戦目、通算6レース目(第2戦が2レース制)にして、#15 ガスリーはシーズン最初の2勝目達成者となった。「最高だね。SFで僕はまだ5回目のレースウイークだけど、2連勝できたんだから」とガスリーは喜びを語り、さらに「チームと一緒に努力してきたことがこうして結果になってあらわれているのが本当に嬉しい。どんどん進歩してきている実感もある」と、陣営一丸の努力と進歩の成果を強調した。

フランス出身の21歳ガスリーは、F1レッドブル陣営のジュニアドライバーで、昨年はGP2(現F2)のチャンピオンにもなっている逸材。当然、来季のF1昇格を目指してもいるわけが、ここへきてF1界の玉突き人事的な影響も受け、今季マレーシアGP(10月1日決勝)からレッドブルの系列チームであるトロロッソでF1に参戦、という噂もある。

それについてガスリーはこう語った。「僕もいろいろな話は聞いている。F1参戦は僕の夢であり、それを叶えるためにこうして毎日頑張っていると言っても過言じゃない。だから、それが実現するなら嬉しいよ。ただ、もちろん今週末はこのレースに集中していた。そして、こうして結果も残せた。次のレース(SF第6戦スポーツランドSUGO=9月23〜24日)も近いけど、(その翌週に)マレーシアでF1に乗れたらいいと思う。ここ2〜3日でなんらかの動きがあるのかもしれないね」

今後の動向がいろんな意味で楽しみになってきたガスリー。ちなみに、もし今季終盤からF1に定着するとなると、SF最終戦鈴鹿がアメリカGP(10月22日決勝)と重なるので、SFのチャンピオン争いを巡る心配も出てくるところだが……。いずれにしても近日中に彼に吉報がもたらされるのかどうか、まずは注目したい。

決勝2〜3位にはSUNOCO TEAM LEMANS(エンジンはトヨタ)の2台が入った。#7 F.ローゼンクヴィストと#8 大嶋和也が、それぞれ10番、15番グリッド発進からの表彰台ゲットを果たしたのだが、彼らは4周目と6周目にピットストップをして給油&タイヤ交換、そこからの50周と48周は無給油、しかもソフトタイヤで走るという作戦を展開した。そして両ドライバーの素晴らしい走りと、データ分析を含めた見事なピットワークでダブル表彰台獲得を実現。やはり新人の#7 ローゼンクヴィストはこれで3戦連続表彰台である。

決勝4位はポイントリーダーの#2 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)。これでドライバーズランクは#2 石浦が首位を守って30.5点、それを#15 ガスリーが25点、#7 ローゼンクヴィストが24.5点で追う形勢となっている。

決勝5〜8位は以下の通り。SF初優勝が期待された予選3位の小林可夢偉は7位だった。

5位 #1 国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)
6位 #37 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)
7位 #18 小林可夢偉(KCMG/トヨタ)
8位 #20 J.マーデンボロー(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)

ポール発進から途中まで首位を走った#40 野尻は、給油&タイヤ交換のためのピットストップを終えた段階で順位が7番手前後まで下がり、さらにアクシデントがあって再度ピットイン、最終結果は14位ということに。また、前戦終了時ポイントランク2番手だった#36 A.ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)はオープニングラップのアクシデントにより1周でリタイア、今季初の無得点でランク4番手(20点)に後退している。

今季SFもいよいよ残り2戦。次戦は宮城県のスポーツランドSUGOにて、今回から中1週の日程、9月23〜24日に開催される。

ゴール直後、ガッツポーズの勝者ピエール・ガスリー。《撮影 遠藤俊幸》 #15 ピエール・ガスリーはこれで2連勝となった。《写真提供 Honda》 #15 ピエール・ガスリーは5番グリッド発進から優勝。《撮影 遠藤俊幸》 健闘を讃え合う、2位のローゼンクヴィストと優勝のガスリー。《撮影 遠藤俊幸》 阿蘇の特産品が副賞としてガスリーに授与された。《撮影 遠藤俊幸》 左から2位ローゼンクヴィスト、優勝の手塚監督とガスリー、3位の大嶋和也。《撮影 遠藤俊幸》 決勝2位の#7 ローゼンクヴィスト。《撮影 遠藤俊幸》 決勝3位の#8 大嶋和也。《写真提供 TOYOTA》 決勝4位の#2 石浦宏明。《撮影 遠藤俊幸》 決勝5位の#1 国本雄資。《写真提供 TOYOTA》 決勝6位の#37 中嶋一貴。《撮影 遠藤俊幸》 決勝7位の#18 小林可夢偉。《撮影 遠藤俊幸》 決勝8位の#20 マーデンボロー。《写真提供 TOYOTA》 ポール発進の#40 野尻は最終結果14位。《撮影 遠藤俊幸》 #15 ガスリーの周辺には早期F1昇格の噂も出てきている。《写真提供 Honda》