マツダ CX-3 ガソリンモデル《撮影 宮崎壮人》

マツダのコンパクトSUV『CX-3』に商品改良が加えられ、これまでディーゼル専用モデルだったCX-3に新たにガソリン車が設定された。事前に耳にしていたのは「国内ライバル車に対し価格競争力も高めるため」というもの。なるほどディーゼル車よりざっと30万円抑えた価格設定、主要オプションを加えても250万円内に収まるとなれば、値ごろ感は高い。

だが一方で、廉価版なのでは? ディーゼル1本の志は後退か!? などと頭に浮かばなくもなかった。が、女性ユーザーが4割に増え、ひと月の走行距離も500km程度、用途も毎日の買い物や塾の送迎中心…そんな実態が見えてきての今回の対策という。

◆2年半で3度目の改良のねらい

「2リットルのガソリン+AT」としたのは、ターボはいらないが1.5リットルでは物足りない、楽しく安心して乗りたい…の声に応えたため。2リットルだが排気量の余裕からアクセルを踏み込まずに済むなど、ターボより燃費性能も有利で、今回から新燃費基準の「WLTC」にもいち早く対応。とくに実用燃費のよさにもこだわり、排ガス規制も5つ★(平成30年基準75%低減)を獲得している。

安全装備もさらに強化。「ユーザーに危険な思いをさせない」を念頭に、今回は国の普及啓発活動の一環、安全運転サポート車の最高ランク「サポカーS(ワイド)」に全車で適合。「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(とAT誤発進抑制制御)」「車線逸脱警報システム」「アダプティブLEDヘッドライト」「ハイビーム・コントロールシステム」を加え、機能を一段と充実させた。このレベルは現時点のマツダ車ではCX-3のみで、先鞭を切ったというところだ。

外観では新色の「ソウルレッドクリスタルメタリック」の投入が注目。なぜ注目かというと、この塗色のときに「ボディパネルのアワセ面がより均一に見えるよう内部樹脂パーツの金型を修正した」から。見栄え品質の向上は明らかだが、2年半で3度目となる改良が、どれだけこだわったものかが伝わる事例のひとつだといえる。

◆2リットルガソリンエンジンの走り

そして走り、である。今回のCX-3でマツダがアピールしてきたのが「躍度」の概念。そう聞くと“ベクトル”だとか“F(力)=m(質量)a(加速度)”だとか眉間にシワを寄せて思い浮かべる人がいるかもしれないが、要は、ある時間における加速度の変化の度合いをより意識した取り組みで、クルマを運転している際の意のままの走り、気持ちよさを高いレベルで達成させましたよ、というもの。見方によっては秘伝のタレのレシピを公開することにした鰻屋のよう。または、そうしたレシピに裏付けられたクルマ作りは、古今東西、どの自動車メーカーでも実行してきたに違いない。マツダでいえばGベクタリングコントロールや、適正なペダル配置によるドライビングポジションの最適化など、安心、安全につながるアプローチに近年、力を入れているのはご承知のとおり。今回の躍度も、マツダがいう「人間中心の走り」を実現するための技術要素のひとつ、という訳だ。

今回の主役の2リットルモデル(2WD車)の実際の試乗は、レクチャーと、開発の現場さながらの特性を切り替えられるデモカーの試乗のあとに行った。その印象だが「とても自然で神経を逆撫でされそうもない」というものだった。ことアクセル操作に関しては個人差、クセがある。レポーターで言えば普段から犬を乗せたり、親戚の年配者を乗せたりする機会が多く、勢いアクセルワークは“じんわり”と行うタイプ。なのでなおさら、新しい2リットルガソリンエンジン搭載のCX-3との相性はよく、終始、自分の意思との乖離、違和感なく、走らせる(走ってくれる)印象。他方で街中での加速や、高速道路のクルージングや加減速も、理屈抜きでスムースだな…と思えた。

対ディーゼル車でいえば、2リットルガソリン車は走行中(やゼロ発進時)の振動やノイズがより小さいのも実感するところ。ディーゼルの心地いい鼓動が伝わるのは決して嫌ではないが、乗り心地も含め、ガソリン車はより上質でしなやかな乗り味で、たとえば上級セダンなどから乗り換えても即刻なじめるものだと思う。手頃なボディサイズで、スタイリッシュで、走りは軽快。そんなCX-3の世界観の幅を広げた新グレードであることは確かだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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