FOCALのデモカー、メルセデスベンツCクラスセダン。センタースピーカーが装着ずみ《PHOTO 藤澤純一》

フランス発の、世界的な高級スピーカーのリーディングカンパニーである「FOCAL」から、メルセデスベンツ『Cクラス』専用のスピーカーキットが発売されていて、好評を博している。そのラインナップに、期待のニューフェイスが加わることと相成った。

ニューフェイスとは「センタースピーカーキット」である。これが何を目指したものなのか、そしてその実力はいかほどなのかを、デモカーでじっくりと確認してきた。そのリポートを、詳細にお伝えしていく。


■メルセデスベンツCクラスの音を、ぐっと向上させる“専用キット”がある。

最初に、「FOCAL」から発売されている、メルセデスベンツCクラス専用のスピーカーキットについて、簡単におさらいをしておこう。

まず、「FOCAL」のことはご存知だろうか。ホームオーディオ、カーオーディオともに、ハイスペックな超ハイエンドモデルからエントリーグレードに至るまで幅広く製品を擁する、世界でもっとも有名なスピーカーブランドの1つである。

その正規輸入代理店である「BEWITH(ビーウィズ)」が、日本のメルセデスベンツCクラスオーナーのために特別にあつらえたのがこの、メルセデスベンツCクラス専用のスピーカーキットだ。製品のタイプは2つあり、1つが『PS 80 F for MB』(税抜価格:8万円、取付費除く)、もう1つが『ES 80 K for MB』(税抜価格:10万5000円、取付費除く)。2機種間ではスピーカーのグレードが異なっているが、両機種とも、専用に最適化された取付パーツ類がセットになっており、キットを購入することで、純正スピーカーから換装するためのすべてが揃う。

これらがヒットしている要因は、メルセデスベンツCクラスのカーオーディオの音を、ぐっと良化できるから、である。同車の基本的な純正フロントスピーカーは、足元のサブウーファーとドアのフルレンジスピーカーで構成されているが、高音の再生を専任で受け持つトゥイーターが存在していない(上級グレード向けのセットオプション装着車以外では、基本的にトゥイーターは未搭載)。

「FOCAL」のキットを追加すれば、トゥイーターによって高音再生の状況が一変するとともに、「FOCAL」ならではの質感の良い中・低音も同時に手にすることができる。

なお、このような恩恵がもたらされるのは、スピーカーの性能が良いから、だけではない。「チューンニングが的確だから」でもある。純正のサブウーファーを活かすためのチューニングパーツも同梱するなど、「Cクラス」の音質向上のための工夫が、各所に行き届いているのである。


■「センタースピーカー」を導入することで、車内の音響特性が向上する!?

さて、それに加えて“センタースピーカー”を使うことで、どのような効果をもたらされるのだろか。

ちなみに、メルセデスベンツCクラスのダッシュボード中央には、センタースピーカーをセットできるスペースがあらかじめ確保されているので、取り付けには大きな加工は必要ない。

そこに「センタースピーカー」を取り付けて得られる主なメリットは2つある。まず1つ目は、「センターイメージの明瞭化」だ。左右のchに分けて録音した音源を左右のスピーカーで再生し、音楽を立体的に感じ取ろうとするのが“ステレオ”の仕組みだが、カーオーディオではリスニングポジションが左右のどちらかに偏るので、音像を立体的に感じ取りにくい。しかしセンタースピーカーがあれば話は変わってくる。

2つ目のメリットは、「音の質感の良化」だ。むしろこちらのほうが重視されているとのことだ。

当キットにおいても、これを実現できるキモは“チューニング”にある。既存のキットとの調整を取るべく、センタースピーカーの再生周波数の範囲(クロスオーバー)、レベル、位相、それぞれが入念に調整されているという。要は「バランスが最適化されている」のだ。

なお、上記のような効果を得ようとするならば、一般的には“プロセッサー”が用いられることとなる。しかしながら、これを操るには技術力が必要だ。それに対して今回の製品では、取り付けるだけでプロセッサーを操ったかのような効果が得られる、というわけなのだ。


■音の変わりようは想定以上。ステレオ感が増し、質感も思いの外良化している…。

ここからはいよいよ、インプレッション・リポートをお伝えしていく。試聴は、「FOCAL」のカーオーディオ製品に特化した世界初のショールーム兼ショップである『FOCAL PLUG&PLAY STORE』(千葉県木更津市)にて実施した。デモカーのメルセデスベンツCクラスセダンで、センタースピーカーの“有り・無し”で音を聴き比べた。

デモカーに装着されているスピーカーは、専用スピーカーのキットのうちのスタンダードグレード、『PS 80 F for MB』。まずは、センタースピーカーキットが取り付けられていない状況の音から確認した。

スタンダードグレードとはいえ、「FOCAL」ならではの質感の良さ、耳当たりの心地良さを十二分に堪能することができた。音楽を聴きながら心が自然とリラックスする。このような感覚に浸れるのは、「FOCAL」ならではと言っていい。

低音も量感たっぷりで、ほど良くタイト。もっともこの低音は、メルセデスベンツCクラス純正のサブウーファーが担当している帯域なのだが、『PS 80 F for MB』のキットに含まれているチューニングパーツの効果がいかんなく発揮されている。ドアのスピーカーとのマッチングが決まり、雑味が取り除かれ2ウェイスピーカーとの一体感も増している。その上で、中域も高域も至ってクリアだ。ハイエンドカーオーディオに迫る、上質なサウンドを堪能できた。

そして続いて、センタースピーカーキットをオンにしたときの音を確認したのだが…。

テストトラックの8小節ほどのイントロが終わった瞬間に、違いをはっきりと感じ取ることができた。センターに立つボーカルのイメージが、見違えるほどクッキリとしている。バックの演奏との距離感もよく分かる。音像の立体感、臨場感が向上していたのだ。

そして、事前の説明で聞いていたとおり、質感の良化も認識できた。なるほど、1音1音に芯が入り、輪郭がシャープになり、そして音の粒のきめ細やかさも向上している。

プロセッサーを導入したような効果が得られるという説明も、至極納得した。「タイムアライメント」機能を効かせたときのように“ステレオイメージ”が上がり、「イコライザー」を駆使したときのように、周波数特性のバランスが整えられた、ということなのだろう。その変わりようは、正直、想定していた以上であった。


■「FOCAL」サウンドを導入するプランの選択肢が、一気に拡大。

ここまでの実効力を発揮したこのセンタースピーカーキットの価格は、以下のとおりだ。

『PS80F for MB』と組み合わされるキットは3万円(税抜)、『ES80K for MB』と組み合わされるキットは4万円(税抜)。プロセッサー的な効果が上がるという観点で考えると、かなりリーズナブル。一般的なプロセッサーはこの価格ではとても手に入らない。費用対効果はすこぶる高い。

なおこれに併せて、それぞれリアスピーカーキットも追加発売されるという。そちらは、『PS 80F for MB』との組み合わせとなるキットが5万5000円(税抜)、『ES 80K for MB』との組み合わせとなるキットが7万円(税抜)、とのことだ。

ただし、音質バランスの都合上、センタースピーカーキット、リアスピーカーキットのみの販売・取り付けは行っていない。しかし、すでにフロントスピーカーキットを取り付けているクルマに対しては、アップグレードという形で取り付けることが可能だ。

これらの登場により、メルセデスベンツCクラスオーナーは、「FOCAL」にてサウンドクオリティを向上させようと考えたときの、選択肢が一気に広がることとなった。フロントスピーカーだけのキットを選ぶも良し、フルセットで導入するも良し。「FOCAL」の取り入れ方を自在にチョイスできる、というわけだ。

この音は、『FOCAL PLUG&PLAY STORE』に行けば確認できる。そして同店で取り付ける場合には、工賃が1時間あたり8000円(税抜)と明瞭化されている。

作業時間は、基本となるフロントスピーカーキットが4時間。フロント+センタースピーカーキットが5時間(センターのみのアップグレードの場合は2時間)。リアスピーカーキットの追加が3時間。そして、フロント+センター+リアのすべてのスピーカーキット取り付けが7時間と、どの取り付けプランを選択しても、朝クルマを預ければ、その日のうちにスピーカーのグレードアップが終了する。

メルセデスベンツCクラスオーナーのカーライフをますます快適にさせる力を持っている「FOCAL」の各専用スピーカーキット。ドライブと音楽はセットと考えているならば、「FOCAL」にぜひともご注目を。

センタースピーカーは、このように装着される《PHOTO 藤澤純一》 センタースピーカーのスペースにカバーをセットしたところ《PHOTO 藤澤純一》 FOCAL『PS 80 F for MB』(税抜価格:8万円、取付費除く)とのセットとなるセンタースピーカー《PHOTO 藤澤純一》 FOCAL『ES 80 K for MB』(税抜価格:10万5000円、取付費除く)とのセットとなるセンタースピーカー《PHOTO 藤澤純一》 FOCALのデモカー、メルセデスベンツCクラスセダン《PHOTO 太田祥三》