全国オートバイ組合協同組合・大村直幸会長《撮影 中島みなみ》

急速に出荷台数を延ばす電動アシスト自転車に比べて、一向に下げ止まる気配がない50cc原付バイク。共に生活の足と例えられる手軽な乗り物だけに、その不振はアシスト自転車の隆盛にあると思われている。

だが、この“定説”を全国オートバイ協同組合連合会(=AJ)の大村直幸会長は、真向から否定する。同連合会に加盟する組合傘下のバイクショップは多様で、その中にはアシスト自転車を併売する店もある。

「アシスト自転車の購買層の追跡調査によると、3割は通常の自転車から乗り換える高齢者、3割は交通機関が偏在する地域の高校生で、残りがまったく新しくアシスト自転車を買う層。原付バイクからの乗換は、ほとんどいない。アシスト自転車が登場したから、原付バイクに乗らなくなったというのは、まったく見当違いなんですよ」

国内出荷台数でアシスト自転車が原付バイクを抜いたのは08年のことだ。この時、原付バイク約29万6000台に対して、アシスト自転車約31万6000台。その後の約10年で原付バイクは約4割減少の約16万台に、アシスト自転車は約7割増加の約55万台と、くっきり明暗を分けた。

「これ以前に原付の出荷台数は50万台前後あった。これが急激に下がった原因は、原付自転車を乗用車扱いして、バイク駐車を取り締まった警察が作った官製不況ですよ」

06年6月に放置違反金制度を盛り込んだ道路交通法が施行され、放置駐車確認標章取付を行う駐車監視員制度も始まる。それまで東京都心以外では、まったくといっていいほど実績がなかった原付バイクの取締りが、全国に広がったのは07〜08年のことだ。

「警察は原付は自転車(=原動機付自転車)だから、制限速度は30km/h、二段階右折じゃないといけないという。だったら、最初から、駐車方法だって自転車と同じように、マナーを守って歩道に止めさせるようにすればいい。なぜ乗用車と同じように放置駐車違反に問われなければならないのでしょうか。この使い勝手の違いが、原付バイクとアシスト自転車の出荷台数の差に現れている」