高次脳機能障害者向け運転能力評価サポートソフト公開(ホンダ交通教育センターレインボー埼玉)《撮影 大野雅人(Gazin Airlines)》

「自分の意思、手足で、また運転したい」 そんな思いと現実を数値で評価し、心身の両面でサポートする現場を見た。

埼玉県川島町。ホンダエアポートの西エリアに位置する、ホンダ交通教育センター レインボー埼玉。各種トレーニングを実施するこの施設で、安全運転普及本部 原田洋一事務局長、山中弘正課長、同センター 倉田誠インストラクター、イムス板橋リハビリテーション病院 伊賀博紀作業療法士らが「運転再開」へ向けた取り組みについて説明した。

まず、こうした運転再開へ向けたトレーニングを実施する社会的背景に、2014年の道路交通法改正がある。同改正では、総合失調症やてんかん、低血糖症、そううつ病、睡眠障害、脳卒中、認知症など、運転に支障をきたす「一定の病気」に該当する運転者は臨時適性検査を受けることが厳格化された。

こうしたハンディキャップを抱えた人が運転を再開させる場合、質問票や医師の診断書を公安委員会に届け出る必要がある。そのいっぽうで、「評価基準が自治体によって違う」「医師の診断や本人の復帰レベルがあいまい」といった、一律の評価レベルが存在しないことや、安全性が担保されてないという実情がある。

ホンダは、認知機能などの高次脳機能障がいを抱える運転者の社会復帰や運転再開へ向けた「自操運転復帰プログラム」を、シミュレーターと実技運転訓練の両面で展開。

シミュレーター分野では、認知・判断・操作といった運転の複合的動作を測定できる「Hondaセーフティナビ」を開発。「病院内でできる運転評価」を目指したモデルで、数値化されたデータで、神経心理学的検査との比較・評価のサポートに貢献するという。

このHondaセーフティナビでは、認知・判断の適応性、アクセル・ブレーキ操作の反応速度などを診る「検査・測定」、運転操作をリプレイし改善点をみる「振り返り」、検査結果を数値化し、同年代健常者と3〜5段階で相対評価する「結果出力」の3段階で総合評価する。

Hondaセーフティナビを導入する病院などで得た「自分の評価」を得るのと同時に、ホンダ交通教育センター(全国7か所)で行う実車訓練評価も組み入れることで「より的確な自分のレベルを把握できる」。

同センターでは、安全確認や目標停止、ハンドル操作、車庫入れ、速度調整、流れに合わせた走行、進路変更、危険予測、車間距離など、33項目をチェックし、「アドバイスしてもできない」「アドバイスするとできる」「アドバイスなしでできる」の3つで評価。シミュレーターと実車訓練の両評価で、的確な運転再開へ向けたサポートを実施していくという。

「自分で運転したい」と思っている障がい者は、まず病院に相談に行き、神経心理学的検査、診断書発行、適性検査を経て、運転できるかできないかのジャッジが下される。この途中に、Hondaセーフティナビや実車訓練評価を導入することで、「より的確に自分の運転可否レベルがわかり、乗り越えなければならないハードル、もしくは諦めるべき理由がはっきりする」。

今回の説明会で担当者たちは、「運転したい」という想いで同センターに駆け込む障がい者のなかには、「自分の可能性がどこまで延びるか試してみたいという人が1〜2割ほどいる」とも伝えていた。

「シミュレーションと実技訓練を重ねていく過程で、スキルが上がったことを実感し、暮らしのモチベーションが広がったという人もいる」

シミュレーターの導入台数も、実車訓練を受ける人の数も、右肩上がり。2014年から現在まで、ハンディキャップを抱えながら実車訓練評価に挑んだ人は、累計178人を数える。

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