新型『カムリ』とチーフエンジニアの勝又正人氏(左)、吉田守孝専務役員《撮影 山田清志》

トヨタ自動車は7月10日、東京・青海のメガウェブで新型『カムリ』の発表会を開いた。会場の後ろには30台以上のテレビカメラが並び、立ち見が出るほどの賑わいで大盛況だった。

その中でトヨタが新型カムリで強調したのは「セダンの復権」だ。この言葉は何度も登場し、トヨタのセダンに対する危機感が伝わってきた。社内カンパニー「ミッドサイズ ビークル カンパニー」のプレジデントを務める吉田守孝専務役員も「この新型カムリでもう一度セダンを輝かせたい。セダンの復権を目指す」と力強く語っていた。

セダンは現在、日米などの主力市場でスポーツ用多目的車(SUV)に需要が奪われ、苦戦が続いている。これはセダンが中心のミッドサイズ ビークル カンパニーにとってゆゆしき事態と言っていい。なにしろ、クローバル販売が400万台を超え、トヨタブランドの約45%も占めているからだ。

なかでもカムリは主力車種で、現在は100以上の国・地域で販売され、累計1800万台超を売り上げている。特に米国では乗用車セグメントで15年連続1位を獲得しているのだ。一方、日本市場ではカムリの販売台数は1990年の8万2000台をピークに減少を続け、2016年には4900台にまで落ち込んでしまった。それだけにトヨタとしては何としてもカムリでセダンの需要を取り戻す必要があったわけだ。

そのために新型カムリでは前例のない変革に取り組んだという。トヨタの新しい設計思想「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」に基づき、「フラットフォームからエンジン、トランスミッションに至るまで、すべてゼロからつくり上げた」(吉田専務役員)という。こんなことは滅多になかったそうだ。デザインについても、豊田章男社長の提案で一番カムリらしくないものにした。

安全装備にしても、衝突回避支援パッケージ「トヨタ セイフティ センスP」を全車に標準装備するとともに、後退時の死角に左右後方から接近してくる車両を検知し自動的にブレーキ制御を行う「リアクロストラフィックオートブレーキ」機能をトヨタブランドで初採用した。

「格好良くて走りもいい、ワクワクドキドキする車をもう一度世に出したい。そういう想いでこのカムリの開発に取り組んできた」と吉田専務役員。ターゲットはセダンの人気が高かった80年代に車を楽しんできた世代と若い人だ。果たしてトヨタの目論見通りにセダンの復権が果たせるかどうか、業績にも直結するだけに新型カムリの販売状況は要注目だ。

トヨタ自動車の吉田守孝専務役員《撮影 山田清志》 新型『カムリ』の運転席《撮影 山田清志》 新型『カムリ』のエンジンルーム《撮影 山田清志》