メガサプライヤーのひとつである独ZFは、9月に行われるフランクフルトモーターショーに出展される予定の一部を報道陣に公開した。
その中でも実際に走行するコンセプトカー『Vision Zero Vehicle』の試乗は、エンジニアが運転する車両への同乗だけでなく、実際に記者がハンドルを握ってのテストコースの周回が可能だった。コンセプトカーが、撮影用や移送用レベルでなく、通常走行のレベルで走行できることも珍しいが、開発者以外にハンドルを握らせることは極めて稀である。
◆死者ゼロのために自動運転技術はある
“VISION ZERO”はZF社が掲げる、”ZERO ACCIDENTS”と”ZERO EMISSIONS”の目標への文字通りビジョンである。一方で、同社ピーター・レイク取締役は、「ZFのビジョンでもあるが、同じ目標を他社も国も社会も目指している、コンセンサスだ」と語り、それぞれの立場によってZEROに対する取り組みは変わってくると説明する。
Vision Zero Vehicle(以下VZV)の担当者でもるイノベーションマネージャーのゲルハルト・グンポルトスベルガー博士は「将来何が起こるか予測し、VISION ZEROに向かうためには何が必要かを考えた」という。現実として「年間世界で約120万人の交通事故死亡者がいること。これを画期的に解決する方法のひとつとして自動化に注目している」として、安全を軸にした自動運転技術がZFのアプローチであることを示した。
◆将来、クルマの内装は大きく変わる
ドイツおよびアメリカでの事故の統計から、乗員が1名、正面衝突、側面衝突、そして乗員が運転に専念しない時代の内装のニーズが高まるだろうと分析したという。
とくに、レベル4以上での走行車両は内装に大きな変化が生じるであろうと予測。ドライバーがどういう状態で何をしているかを車内のセンサーにより認識し、さらに衝突安全のためには乗員拘束ベルト(シートベルト)は必ず必要であり続ける。エアバッグは場合によってはシートに内蔵したり、場合によっては車外に展開するような形状も考えられるとしている。
◆ポイント・オブ・ノーリターン
様々な事故の実例を分析すると、前方衝突における「ポイント・オブ・ノーリターン」つまり、衝突事故が回避できない時間的ポイントは500msec、つまり衝突の0.5秒前ということが判明しているという。よってこれまでのように衝突が起きてからエアバッグを展開するのではなく、衝突回避不可能となった時点でエアバッグやシートベルトの動作が始まることで、もっと乗員や対象物のダメージを減らすことができるはずだとZFは考えて、センサー技術を研究しているいう。
近距離は高性能な3Dライダーまたはレーダーが必要で、中距離はビデオ解析、さらに外の領域は低解像度の3Dライダーまたはレーダーでも良い。それぞれ最善の視界を得るためにはコネクティビティが必要となる。ZFはこれまですべてを内製する企業だったが、今の方針は時間を節約するために提携戦略をとっている。
「共通のビジョンである事故ゼロ、排ガスゼロに対して、何をすべきなのか。カーメーカーに対して提案してゆく能力を持ちたい。Vision Zero Vehicleは、現在のZF技術のショーケースであると同時に、実際に走らせてテストしてもっと技術を高めるためにつくったコンセプトカーである」(ゲルハルト・グンポルトスベルガー博士)
協力;ZF(プレスイベント)
『Vision Zero Vehicle』はZFだけのビジョンにあらず、共通ビジョンを形にした…グンポルトスベルガー博士
2017年06月25日(日) 00時15分
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