僚友ドライバーである中嶋大祐(右)と言葉を交わすジェンソン・バトン。《撮影 遠藤俊幸》

7日、鈴鹿サーキットでのSUPER GT タイヤメーカーテストが2日目(最終日)を迎え、8月の第6戦鈴鹿1000kmにスポット参戦するジェンソン・バトンは雨模様となったこの日もGT500クラスのNSX-GTで26周を走行、笑顔とともにサーキットを離れている。

2日目は午前午後とも約2時間ずつの走行セッションがスケジュールされた。出走はGT500、GT300の両クラスとも8台。ただ、テスト規定等の絡みで午後は走行時間の有無や長短がチームによって異なり、元F1王者バトンが乗る#16 MOTUL MUGEN NSX-GT(レギュラードライバーは武藤英紀&中嶋大祐/タイヤはヨコハマ=YH)は午前のみで今回のテストを終える予定となっていた。

午前のセッションは小雨が降ったりやんだりという状態で始まる。#16 NSXはまずバトンがステアリングを握ってドライタイヤでの走行に臨む。

2回のピットインを挟んでバトンは計17周を走行(周回数やタイムは手元集計)。この段階での路面は全体のタイム水準から見た場合に、ちょい濡れというよりは、ほぼドライに近いと考えられる状況だった。バトンは1分49秒706をマークしており、これが彼自身の初日〜2日目を通じてのパーソナルベストとなる。

その後しばらくは武藤がドライブを担当し、雨が強くなったセッション終盤に再びバトンが搭乗。今度はレインタイヤで計9周(途中ピットイン1回)を走った。雨の個人ベストは1分59秒540。タイヤ戦争があるSUPER GTの場合、レインになると特にタイム比較は難しいのだが、同じ時間帯に走った他車には少し見劣っていた。

ただ、コースアウトやマシントラブル等なく、1日半という貴重なテスト機会を武藤、中嶋、そしてチームスタッフやタイヤメーカーとの共同作業でしっかりメニューを進め、バトン自身も短い時間でできる範囲内の“SUPER GTへの適合”は果たしたように見られる。セッション後には全チームスタッフと笑顔で握手を交わし、さらには短い時間ながら今日もピット裏に集まった相当数のファンにも笑顔で対応し、鈴鹿をあとにした。

武藤によれば、マシンの状態は前日よりも「だいぶバランスは良くなりました」とのこと。バトン自身も「昨日はドライブが難しい状態だったが、今日はマシンが僕のドライビングスタイルに合っていた」とセットアップの改善を実感している。ただ、「当然だけど、まだ十分なラップ数を重ねられたとはいえない」ともバトンは語り、短い時間と今回のテスト状況のなかでは体験できなかった「GT300クラスのマシンがもっとたくさん走っている状況でのトラフィック、それが自分にとって困難なものになるだろうね」との予測も立てていた。

現段階ではバトンはこのまま8月末の鈴鹿1000km本戦レースウイークを迎える見込み。6月30日〜7月1日に予定されている鈴鹿での公式合同テストには参加しない予定なのだが、この日のバトンの口ぶりからは、スケジュール調整ができるのであれば公式合同テストにも出て、レギュラードライバーのテスト時間をなるべく奪わない範囲で、参戦全車が(基本的に)揃う状況下での本格的なトラフィックを経験しておきたい、そんな意向も窺えた。今後の動きに注目したいところではあるが、いずれにしても武藤、中嶋とのトリオで戦うというF1にはない勝負環境をバトンは楽しみつつ、かつ真剣に取り組んでいる。

今回の鈴鹿テストでバトンがチームに、そしてファンに対して見せた献身ぶりは想像以上といえるものだった。F1王者というと、その実績ゆえ、どこか近寄りがたい存在のようにも思えてしまう。実際には過度に尊大な態度を取るF1王者などいないのだが、それにしてもバトンの参戦姿勢には献身性が溢れていた。鈴鹿1000kmでは、やはりスポット参戦する小林可夢偉とともに注目選手2巨頭ということになるだろう。

なお、鈴鹿テスト2日目のGT500最速タイムは#23 MOTUL AUTECH GT-R(タイヤはミシュラン)が記録した1分47秒501。GT300の一番時計は#9 GULF NAC PORSCHE 911(YH)の1分58秒256だった。午後は完全なレインコンディションとなり、いずれのタイムも午前のセッションでマークされている。

このあとSUPER GTのレース実戦は7月22〜23日の第4戦スポーツランドSUGO(宮城県)までなく、それまでの間に2回、6月17〜18日のSUGOと6月30日〜7月1日の鈴鹿という日程で公式合同テストが予定されている。そして第6戦、来季から単独の10時間耐久レースに生まれ変わるため1000kmとしては最終開催になる鈴鹿1000kmは、8月26〜27日の開催となる(来季のSUPER GT鈴鹿戦は10時間耐久とは別に開催予定)。

バトンを迎え入れて鈴鹿テストに参加した#16 NSX。《撮影 遠藤俊幸》 #16 MOTUL MUGEN NSX-GT《撮影 遠藤俊幸》 身振り手振りも交えながら、ドライビングについて情報交換するバトンと中嶋大祐。《撮影 遠藤俊幸》 身振り手振りも交えながら、ドライビングについて情報交換するバトンと中嶋大祐。《撮影 遠藤俊幸》 自身の走行を終え、マシンを降りたバトン。《撮影 遠藤俊幸》 チームスタッフとも積極的に言葉を交わしていた印象のバトン。《撮影 遠藤俊幸》 手塚監督(中央右)と話す武藤英紀。《撮影 遠藤俊幸》 今日も鈴鹿のピット裏は“バトンフィーバー”。《撮影 遠藤俊幸》 GT500トップタイムの#23 GT-R。《撮影 遠藤俊幸》 GT300トップタイムの#9 ポルシェ。《撮影 遠藤俊幸》 SUPER GT第6戦鈴鹿1000kmは8月末の開催。《撮影 遠藤俊幸》