バトンが乗る#16 NSX-GT。《撮影 遠藤俊幸》

鈴鹿サーキットでのSUPER GT タイヤメーカーテスト初日(6日)、注目の元F1王者ジェンソン・バトンは午後のセッションで約1時間の走行に臨み、安定したラップタイムでの走りを披露。その献身的な参戦態度とともに、僚友ドライバーやチームスタッフに感銘を与えている。

初日午後は約4時間のロングセッション。GT500クラスの#16 MOTUL MUGEN NSX-GT(タイヤはヨコハマ=YH)に武藤英紀、中嶋大祐とともに乗り組むバトンは、3時25分頃から約1時間、マシンのステアリングを連続的に握った。

手元集計でバトンの総周回数は26周。ベストタイムは1分51秒785(チームベストの1.2秒落ち)で、最長15周のロングランもこなしている。

ロングラン中のタイムは最初が1分54秒台、しばらくしてからは1分53秒台で安定しており、チーム首脳によれば、マシンやタイヤへのコメントもさすがというレベルのしっかりしたものが上がってきているそうだ。「屋根のあるクルマでのレースは初めて」の“新人”とはいえ、世界最高峰を極めたドライバーのスピードポテンシャルと経験値、適応能力は伊達ではない、というところだろう。ホンダの山本雅史モータースポーツ部長は、「昨日、シート合わせをしただけでも(バトン独自の)気付く点があった」という。

武藤によれば、この日のマシンコンディションはセットアップ面の大きなトライが功を奏さず、決して良くはなかった。ただ、そのなかでも武藤と中嶋が今季これまでの戦いで訴えてきた課題点をバトンも追認してくれるようなインフォーメションのやりとりがあり、チームとして目指すべき方向性を再確認できた一日でもあった模様だ。

そして“F1チャンピオンらしからぬ”フランクさと、チームプレーに徹する態度には武藤、中嶋、手塚長孝監督らも感心しきり。実際に走ってみたことで、実走戦力としての手応えも陣営は得られたようである。あとは本戦時、今日の約3倍(45台)に膨れあがる参戦台数のなかで、速さの違うGT300クラスのマシンをどうラップしていくか、そこがバトンにとっての未知数ゾーンということになるだろう。

ただ、逆にいえば現状、“不安はそこのみ”でもある。正直言って長らく苦境にあるホンダNSX勢、バトンというカンフル剤を得ての巻き返しに期待したい。

初日は午前も午後も#23 MOTUL AUTECH GT-R(タイヤはミシュラン)がGT500クラスのトップタイムをマーク。最速時計は午後の1分48秒204だった。

タイヤメーカーテストには「1タイヤメーカーあたり1車種1台」という参加制限があるため、今季絶好調のブリヂストン装着レクサス勢は#38 ZENT CERUMO LC500のみの参加。このマシンは第6戦時を想定し、燃料流量リストリクターによる調整を含む“重ハンデ仕様”でテストに臨んでいることが予想されるため、タイムの比較は難しいところだ。ただ、#38 LC500が午前に1分48秒647(そのセッションでのトップに0.145秒落ち)をマークして午前午後総合2番手というところを見ると、やはり強いか。

GT300クラスでは今季開幕ウイナーの#4 グッドスマイル 初音ミク AMG(YH)が1分58秒752で午前午後総合のトップに立っている。

テストは明日(7日)までの予定。2日目は9〜11時と13〜15時の2セッションが予定されているが、天候状況等によっては変更される可能性もある(それとは別にチームによって参加時間帯が異なる状況もある模様)。

バトンは明日も走行予定。この日もピット裏には多くのファンが訪れ、それにバトンが精一杯の対応をするシーンも見られた。バトンという新たな風が吹き、国内最高人気シリーズであるSUPER GTはその注目度を一層上げることになりそうだ。

スタッフとの仕事も順調そうなバトン。《撮影 遠藤俊幸》 #16 NSX-GTの鈴鹿1000km参戦トリオ、左から武藤英紀、バトン、中嶋大祐。《撮影 遠藤俊幸》 バトンが乗る#16 NSX-GT。《撮影 遠藤俊幸》 マシンに乗りこむバトン。《撮影 遠藤俊幸》 セッション中、中嶋大祐らと言葉を交わすシーンも。《撮影 遠藤俊幸》 バトンが出てきてくれたため、ピット裏は大フィーバー状態に。《撮影 遠藤俊幸》 GT500トップタイムの#23 GT-R。《撮影 遠藤俊幸》 GT300トップタイムの#4 メルセデスAMG。《撮影 遠藤俊幸》 鈴鹿テストは明日(7日)まで続く予定。《撮影 遠藤俊幸》