初代『V70』(『850』の改名版)の時、バンパー形状等を変え、車高を高めて登場した『V70 XC 4WD』が源流。以来、エステート由来のクロスオーバーとして代名詞的存在の同車が、前身の『XC70』からバトンタッチし車名も『V90クロスカントリー』に一新、新型に生まれ変わった。
最新の『V90』がベースのスタイリングは実にスマートだ。ひと頃は“プロテクト感”を表現しグリルまわりも原着の樹脂で装っていたが、新型はフェンダーアーチ、サイドシル部にエクステンションを装着。前後バンパーまわりも専用のデザインとするが、いかにもなラギッド感は控えめにすら感じる。また255/50 R19 サイズの大径タイヤを履くのも超現代的。とはいえ最低地上高は210mmを確保しており、これはベースの『V90』に対し+55mmもの余裕。ちなみにトレッドも『V90 T6』に対し前/後で+35/+25mmの拡幅になっている。
一方でベース車同様に事実を記せば、ラゲッジスペースは数値上は560〜1526リットルへと『V70』(575〜1600リットル)より減じている。バックドアが大きく寝かされたデザインの影響だが、これは「今や大きな買い物でもネットで注文を入れて、自分で運ぶ機会は滅多にないでしょ」という判断らしい。裁ち落とされたリヤと長いリヤクオーターウインドを懐かしむファンもいると思うが、ゆとりのあるボディサイズのため、そう目クジラを立てなくでもいいのでは?と書いておこう。
ボルボのアクセサリーでおなじみの“ドッグゲート”も専用品が用意され、バックドアの傾斜にあわせた形状のハネ上げ開閉式ドア(ダンパー付き)が備わるタイプとなる。
そして、何といっても走りがいい。今回はグランドツーリングをイメージしながらの短時間の試乗だが、その範囲でも、懐の深い、いかにも同車らしい安心感と快適性の高い走りが実感できた。とくに現行『XC90』のコンポーネントが使われているというサスペンション(とトレッド拡大)の恩恵は大きく、『V90』以上の、路面からの入力のイナシが心地いい。もちろんラフロードでの安定感も申し分なし。オンロードでは適度にフンワリとした乗り味が楽しめ乗り味はしっとりとしているし、スッと直進性を保つステアリングもドライブのストレスを感じさせない。
今回の試乗車は「T5」で、254ps/35.7kgmのスペックの4気筒2リットルターボだが、レブリミットまでキレイに回るエンジンで、絶対性能は十分、フィーリングも良好だ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
【ボルボ V90クロスカントリー 試乗】懐の深い乗り味は“ならでは”…島崎七生人
2017年05月14日(日) 12時00分
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