PSAの本命パワートレイン「BlueHDi」を搭載する、プジョー308とDS 5

昨年から続々とディーゼルエンジン搭載モデルのラインナップを拡大しているプジョー・シトロエン・ジャポン。プジョーの主力車種である『308』やフラッグシップの『508』をはじめ、シトロエンとDSブランドにも、クリーンディーゼルエンジンの「BlueHDi」を搭載する。そんなプジョー・シトロエン・ジャポンのディーゼルエンジンモデルの魅力を大谷達也氏と南陽一浩氏の両名が語る。

◆キャラクターが明確に違う、ふたつのディーゼル

大谷達也氏(以下、大谷):南陽さんは、プジョーの新しいSUV、『3008』にはもう乗りましたか?

南陽一浩氏(以下、南陽):フランスでディーゼルエンジンモデルに乗りました。発表会では「SUVでもハッチバックと変わらない走りです」とアピールしていて、さすがにそこまでは…と眉唾気味に流していたのですが、実際に乗ると、シュルシュルっと曲がって本当によく走る。

大谷:それは期待できますね。ディーゼルエンジンは308や508と同じスポーティな味付けの2リットルディーゼルターボですよね。

南陽:ボクは1.6リットルと2リットルの両方に乗りました。2リットルはパンチがあって、スピードが上がるとすごく楽しいですね。

大谷:ボクは2リットルを積んだ「308 GT BlueHDi」を狭いつづら折りの続くワインディングで乗ったんですけど、パワーゾーンではすごくレスポンスがいいんですよ。コーナーを立ち上がって加速するときに、アクセルペダルに対して全然遅れなくて。2500回転よりも上のエンジン回転数を保っていると、ピックアップが良くてどんどん加速していく。

南陽:1.6リットルと比べると、2リットルはフロントが重いんですけど、308はその重さを感じさせないですよね。新しいプラットフォーム「EMP2」のおかげで、クイクイっと鼻先が入っていく。ワインディングではエンジンの重さを忘れさせます。

大谷:そうそう。路面がドライだと踏んでいってもアウトに逃げない。308はちゃんと入っていく。新しいプラットフォームと、2リットルのディーゼルエンジンの組み合わせはワインディングで最強ですよ。ディーゼルモデルでワインディングをこんなに走れちゃうクルマがあるんだって驚きました。

南陽:でも、実をいうと1.6リットルのほうが、ボクの好みなんです。2リットルは確かにパンチがあって、エンジン回転数が高いと楽しいけれど、エンジン回転数が低い市街地では、1.6リットルのほうがトルクの立ち上がりが早いんですよね。

大谷:ボクが試乗したのはワインディングだったから、2リットルの良さが出たというのがあるかもしれないですね。エンジン回転数をパワーゾーンに保てばすごくスポーティに走るけど、低回転域で巡航しているときに、そこから加速しようとするとワンテンポあるかもしれない。

南陽:エンジン自体の軽さもあって、1.6リットルのほうが軽やかに転がり出す感じがします。個人的には1.6リットルを積んだ「308SW」くらい緩いのが落ち着いていい感じです。あと、味付けだけじゃなくて経済性がいい。1.6リットルを積んだ308でパリ〜ボルドー間(片道約600km)を往復したんです。途中でワインディングとかもありますけど、大人しく普通に走っていれば実燃費で20km/リットルを超える。そりゃフランスの一般人は1.6リットルを選ぶでしょう。やっぱりフランスではディーゼルエンジンの主力は1.6リットルなんですよね。

大谷:むしろ効率的で、このほうがフランス車っぽいじゃんということですね。旧来のフランス車好きは1.6リットル、スポーツ系な味付けを求める人は2リットルという選択ができますよね。

◆やわらかいフランス車が戻ってきた

大谷:308だけじゃなくて、シトロエン『C4ピカソ』もいいですよね。PSAのクルマ作りって、ここ10年くらい迷走していたように思えたけど、「EMP2」というきちんとした土台が完成したことで、やりたいことがしっかりできるようになってきたように思います。だからこそ3008にも期待できる。

南陽:PSAのプロダクトは、まさに今が上り坂の時期だと思います。何が驚いたって今年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを3008が受賞したこと。

大谷:そんなに意外ですか?

南陽:2014年に308が受賞していたし、これまでSUVが欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことってないんですよ。いいところまではいくんだけど、最終的にはハッチバックとかセダンとかが受賞する。そもそもSUVは数合わせ的な存在だった。あの保守的なヨーロッパの自動車ジャーナリストたちに走り云々を語られる存在になったんだなって。

大谷:PSAも旧来のフランス車の乗り味に戻っているように感じられてボクは嬉しいですね。

南陽:308に初めて乗ったときは、とにかく軽くてやわらかくなったという印象でしたね。

大谷:シャシーはすごく固いけど、足はやわらかい。ロードホールディング性能が良くてちゃんと曲がってくれる。それがフランス車の良さだと思うんです。

南陽:いわゆる“粘っこさ”ですよね。この前、プジョーの地元、ジュラ山脈近くを走る機会があったんですけど、そこの山中ってひどい峠道なんですよ。イメージとしては高低差の少ない箱根ターンパイクのような感じで、そして路面がすごい荒れている。そこを地元の人は鬼のように飛ばしていくんですよ。お年を召された方々も。だからクルマは軽くなきゃダメだし、鼻先がグイグイ入っていかなきゃいけない。

大谷:道は荒れているし、滑りやすいから、きちんとタイヤがグリップして路面を捉えないといけないし。

南陽:そう、ロードホールティング性能がすごく大切。

大谷:そんな人たちに鍛えられてきたクルマなんですよね。フランス車は乗り心地の良さを評価されることが多いけど、実はそれだけじゃない。

南陽:車速を上げていったときにバチンとはまるポイントがあって、そこですごい走りの良さが表れるんです。

大谷:そうなんですよね。実はある意味、すごいスポーティ。そしてすごく安全に走れるクルマ、それがフランス車なんですよね。

●プロフィール
大谷達也|モータージャーナリスト/AJAJ会員/日本モータースポーツ記者会会員/2017-2018 日本カーオブザイヤー選考委員
1961年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に、二玄社に入社し、CAR GRAPHIC編集部に配属。2002年、副編集長に就任。2010年よりフリーランスのライターとして活動を開始。現在は自動車雑誌、ウェブサイト、新聞、一般誌などに記事を寄稿。

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点にクルマの他にも時事ネタやファッション、旅行などの分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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