RではないみたいなRだ…が、第一印象。かつてのボルボの“R-デザイン”は、それは走らせる気満々のハード志向で、インパクト絶大だった。が、最新モデルに乗ると、改めてその様変わりぶりに驚かされる。
顕著なのは、乗り心地のよさ。新世代の高性能版「T6 インスクリプション」と共通とはいえ、255/35R20サイズタイヤを履き、当然ながらサスペンションは専用チューンだ。が、言われなければ、走り出しても“R”とは意識させられないほどゴツつかず、なめらかな乗り味なのには驚く。
おそらく20インチタイヤ程度は最初から想定した上で、タイヤのポテンシャルを使い、サスペンション側は乗り心地分のチューニングも余裕をもってできた…そんな印象。『S90』は上級セダンだが、この振るまいなら、クラス基準に照らしてもまったくコンプレインは出ないはずだ。
とはいえ走らせると“R”らしい。コーナリング中のジワッとしたロールや、ステアリングのスムースで安定した操舵フィールがいい。操舵フィールは、“切る”“戻す”の両方が自然な感触で、チューニングのセンスのよさを実感。他方で高速直進安定性の高さも目を見張るが、これはAWDならではのものでもある。
100km/h・8速で1650rpmほど(7速で2000rpm)のパワートレーンも余裕は十二分。意思を持ってアクセルを踏み込めば切れ味のいいパワー感と音が楽しめるが、いずれにしろそれは、4気筒の2リットルだということを忘れさせられるほど。シートは専用デザインで前席はスポーティなバケット形状。とはいえサイド部でシッカリと身体を支え、メイン部分は表皮のレザーもしなやか。運動性能、動力性能にバランスした、シャープだが快適な室内空間…というのも心地よい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
【ボルボ S90 R-デザイン 試乗】“R”らしからぬ最新“R”の洗練度…島崎七生人
2017年05月04日(木) 12時00分
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