1997年に登場した前身の『V70 XC』以来、本格SUVの『XC90』が登場してからも脈々と受継がれて来たボルボ・ワゴンタイプSUVの血統に、新たな顔が登場した。フラッグシップワゴン『V90』をベースに、クロスオーバーSUVとしたモデル『V90クロスカントリー』だ。
3世代にわたりV70 XCを販売し、今も『V40』『V60』にクロスカントリーシリーズをラインアップ。独自のクロスオーバーワゴン市場を支えて来たボルボ。他ブランドでもアウディの「オールロード・クワトロ」、スバルの「アウトバック」、VWの「オールトラック」など、同コンセプトのモデルは散見され一定の人気を博している。そんな中でメルセデスベンツが『Eクラス』に「オールテレーン」というクロスオーバーワゴンを投入することを発表、本命の登場とあって市場全体の盛り上がりが期待されている。
その期待を裏付けるように、V90とV90クロスカントリーの受注比率(4月現在)はV90クロスカントリーの方が多く、ボルボ関係者も驚きを隠せない様子だった。
V90クロスカントリーは、新世代プラットフォーム「スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー(SPA)」の採用、2リットルエンジンを核とした「Drive-E」パワートレーンの搭載、自動運転を見据えた先進の安全装備「インテリセーフ」など、最新ボルボの文法に全て則った上で、クロスオーバーSUVとして差別化を図っている。
V90との大きな違いは、エクステリアとシャシーだ。エクステリアは、V90をベースとしながらSUVらしい専用パーツを多数装着する。フロントグリルはブラックの縦格子にシルバーのポイントをあしらう。スキッドプレート付きフロントバンパー、チャコールカラーのフロント/リアアンダー、フェンダーエクステンション、サイドシル、ドアトリム、「CROSS COUNTRY」ロゴ入りリアバンパー、マフラーエンドはいかにもなSUVらしさを演出。窓枠がブラックに縁取られているのもクロスカントリーならではだ。
シャシーの基本構造は90シリーズ共通ながら、SUVらしい走行性能のため様々なチューニングが施される。90シリーズに共通する特徴としては、コイル式バネを使用せずリーフスプリング(板バネ)を使用したマルチリンクサスペンションが挙げられる。これにより、4.5kgの軽量化、荷室の最大化、快適性の向上、さらにアンチロールバーの役割も果たし走行安定性を向上させるなど、見どころは多い。
クロスカントリー専用サスペンションは、V90比で55mm高められ最低地上高210mmとし、トレッドもV90 T6比でフロント+35mm、リア+25mm拡大されている。アプローチアングルは18.9度、ランプアングルは17.7度、ディパーチャーアングルは20.7度を確保。フロント/リアサスペンションには本格SUVであるXC90のコンポーネントを活用し、さらに専用のホイールスピンドルも装備。見た目の“SUV感”だけでなく高い走破性も実現する。
インテリアのデザイン、12.3インチのドライバーディスプレイや9インチのセンターディスプレイなど、すっきりとまとめられた機能性にあふれるインタフェースは90シリーズ共通。ドアトリムやダッシュボードに配される「ブラックウォールナット」のウッドパネルはクロスカントリー専用だ。ウッドそのものの素材感、凹凸を残した仕上げは「オープンポアー」と呼ばれる高級家具などに用いられる手法で、自動車ではロールスロイスやベントレーなどで採用されるものと同じ。スウェーデン生まれのボルボならではの贅沢なあしらいだ。
V90クロスカントリーは、254psの「T5」と、320psの「T6」を設定。それぞれにベース車の「Momentum」と上級装備仕様の「Summum」を用意する。価格は694万円から819万円。
クロスオーバーSUVの新潮流となるか、ボルボ V90 クロスカントリー[写真蔵]
2017年04月28日(金) 08時00分
関連ニュース
- 【ボルボ EX30 新型試乗】走りはピカイチ、だが“安全のボルボ”に相応しくないのは…河村康彦 (04月14日 10時00分)
- 【ボルボ EX30 新型試乗】自宅に持ち帰りたいほど秀逸だったのは「音」…島崎七生人 (04月01日 21時00分)
- ボルボカーズ、ディーゼル車の生産を終了…2030年にEVメーカーへ (03月28日 13時00分)
- 【ボルボ EX30 新型試乗】長距離を走ってみたいと思わせる一台…井元康一郎 (03月20日 08時00分)
- ボルボが新型EV建機『EC230エレクトリック』を日本導入へ (03月18日 16時25分)