ロールスロイス ゴースト シリーズII撮影 中村孝仁

正直な話、こんな機会(日本自動車輸入組合の試乗会)でもなければ、我々ジャーナリストでも一生触れないだろうというクルマの1台が、ロールスロイスだ。その中でも『ゴースト シリーズII』は、同社のレンジの中では俗にお求めやすい価格となっているクルマなのだ。

お求めやすいと言っても、車両本体価格3123万円は、まあとてもじゃないが庶民的感覚からすれば自動車の値段じゃない。そのクルマに触れてしかも運転までできると思うと心躍るのは、クルマ好きなら当然である。

今回のジャーナリスト向け試乗会に参加したクルマのほとんどは、ご親切に基本スペックや車両価格をファイルしてクルマに載せている。しかし、今回ばかりはそいつを見てぶっ飛んだ。車両価格3123万円はロールスロイスだからまあ当然だよなと納得。しかしである。この試乗車に装備されたオプションの合計価格が、何と1053.5万円。車両価格の1/3が上乗せとなって、実際の販売価格は実に4215.5万円に跳ね上がっていた。1000万円を超えるオプション価格の値段を見たのはこれが初めて。そこでもう戦意喪失というか、あまりの凄さに圧倒されてしまった。まずい…。

気を取り直してエンジンスペックを見る。6.6リットルツインターボV12。これは昨年試乗した『レイス』と同じだ。ただ、出力やトルクに関しては、一応クーペのレイスよりも抑えられていて570psと780Nmである。

最新鋭のロールスロイスの恐ろしいところは、以前、即ちBMW傘下に入る前の独立した時代のモデルだと、素晴らしく静かで快適な乗り心地を持ってはいたが、パフォーマンスの点でどうかと言われると、正直飛ばすクルマではないな…と思っていた。それがBMW傘下となって以降は、エンジンや足回りを強化しつつも依然として無類の静粛性や快適性を保持するクルマに変わって、飛ばしても大丈夫…なクルマに変貌しているところである。ゴーストはそんな中で最も飛ばせるセダンでコンパクトである。ただ、小さい(ロールスとしては)と言っても、ショートホイールベースモデルでもホイールベースだけで3295mmもあり。3サイズは5400×1950×1550mmもあって、相当な覚悟がないと飛ばす気にはなれないサイズなのである。

だから、ハンドリングを云々する試乗などできない。空いた高速の区間を見つけてアクセルをグイッと踏むのが関の山だが、その加速、ただものじゃありません。

静かとか、快適という言葉は多分聞き飽きたと思う。だから、その快適の一端を示すお話だけしよう。読者の皆さんは路面に黄色やレンガ色の滑り止め舗装をしたところを通った経験があると思う。あの上を通過すると、相当な突き上げ感を車体にもたらす経験も同時にしているはずだ。ハードなサスペンションを持ったクルマならなおさら。ところが、ロールスロイスはあのすべり止めの上ですらほとんど揺れることもなく、ましてや突き上げ感などほぼ皆無。僅かにパたパタパタという音と共に軽い振動が来る程度なのである。今回の試乗時のように雨など降っていようものならほとんどわからないレベルである。そして雨が降るにもかかわらず、ドアを閉めると静寂に支配される。まさに外界とはきっちりと一線を引いた空間がそこにはあるのだ。

雨で重宝したのがドアに仕込まれた傘。ドアを開けるとそのドアの厚みの中に立派な傘が仕込まれていて、ボタン一つでポンと飛び出してくる。少なくともその傘を差し掛けるのはショーファーの仕事だろう。おかげで後席の住人は、まるで濡れないですむという寸法だ。やはり、このクルマに乗ると異次元の空間を感じる。

■5つ星評価
パッケージング ―★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ―コメント不能

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

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