ホンダ ブリオ・サティヤ(ジャカルタモーターショー13)《撮影 吉田瑶子》

インドネシアで低価格低排出車優遇策「LCGC(=ロー・コスト・グリーン・カー)プロジェクト」が始動した。

10%の奢侈税(ぜいたく税)が全額免除されるLCGC適合車。最低価格は65万円で、圧倒的なコスト競争力が消費者の心を捉える可能性は高い。また、インドネシア政府は主要部品の国産化ルールを設定しており、部品産業の育成・強化を促す考えだ。

◆エアコン無しで65万円

2013年9月9日、トヨタとダイハツはそれぞれ『アギア』、『アイラ』を発売した。1.0リットルガソリンエンジン搭載のこの小型車は、LCGC政策に適合する第1弾モデル。これ続いて9月11日にはホンダが『ブリオ・サティヤ』を発表した(発売は10月以降)。また、スズキは年内に『カリムン・ワゴンR』を、日産はダットサンブランドで開発中の『ゴー』と『ゴー+』を2014年に販売開始する計画である。

LCGCの最大の魅力は価格で、100万円を下回る製品が主軸だ。装備が充実しているアギアの価格は9900万〜1.2億ルピア(約85万〜103万円)。アイラは7610万〜9750万ルピア(約65万〜83万円)となっている。アイラにはエアコン無しのグレード(7610万ルピア)が設定されているが、これは価格の安さをアピールするための大胆な作戦だろう(実際、売れ筋はエアコン付きの上位グレードである)。

また、排気量1.2リットルのブリオ・サティヤは1億0600万〜1億1700万ルピア(約90万〜100万円)で、『ジャズ』(日本名:フィット、1億9400万ルピア〜)のほぼ半額だ。

気になる消費者のリアクションだが、ダイハツは発売2週間足らずで販売目標の2倍以上となる8500台を受注したことを明らかにした。LCGCを巡っては「大家族主義で、7人乗りMPVの人気が高いインドネシアには合わない」といった議論もあったが、主流の小型MPVに比べて3割以上も安い製品の登場が早くも市場活性化につながっている。スタートは上々だ。7人乗りのコンパクトMPV、ゴー+が投入されれば、さらに販売が伸びると見込まれる。

◆LCGCは輸入依存低減策

市場活性化策としてのLCGCに注目が集まるが、インドネシア政府が狙うのは部品産業の発展だ。

インドネシア市場は数年以内にASEAN首位に躍り出ることが確実で、さらに将来的には数百万台に達すると予想される。しかし、国内の部品産業の育成が遅れれば組立用部品や原材料の多くをタイなどから輸入に依存することになりかねない。部品産業を置き去りにして市場と組立産業だけが拡大すれば、貿易赤字の増大につながる。「空洞の自動車大国」にならないためにも、部品産業の発展が急務だ。

こうした課題を背景に、インドネシア政府は主要部品の国産化に関する条件をLCGC政策に盛り込んだ。国産化計画の提出が求められている部品は100項目を超え、投資がかさむエンジンと変速機の鋳鍛造や機械加工も含まれる。これらに対応するため、ダイハツはエンジンの生産ライン増設に最大200億円を、スズキは2014年稼働予定の新工場に総額1000億円(うちエンジン工場400億円)を投資する。ホンダと日産も300億円前後(車両+エンジン)の投資計画を進めている。また、ダイハツの現地工場はLCGC生産に当たって30社以上と新たに取引を開始したが、このために現地進出した日系サプライヤーも多い。現地化強化の取り組みが前進している。

◆LCGCの次の手?

LCGC関連の設備投資は完成車メーカーと部品メーカーの合計で2000億円を超える。インドネシア政府の目論見はひとまず当たった格好だが、これは潜在的な成長性を開花させるための手段のひとつに過ぎない。また、工業省は2025年までの成長シナリオとして、ハイブリッド車を含む車両・コンポーネントの輸出拠点化、小型MPVや乗用車の開発拠点化、といった野心的な計画を思い描いているが、これらは内需の将来性だけでは達成できない目標だ。LCGCに続く成長戦略が問われている。

会場内の壇上でコンパイニオンに紹介される『カリムン ワゴンR』 トヨタ アギア《撮影 土屋篤司》 ダイハツ・アイラGT ダットサン GO+(ジャカルタモーターショー13)《撮影 土屋篤司》 ダットサン GO(ジャカルタモーターショー13)《撮影 土屋篤司》