デュバル(左)とウルリッヒ代表。

富士スピードウェイで20日に決勝が開催された世界耐久選手権(WEC)第6戦において、アウディのシーズン全勝は途切れたが、同社の2年連続LMP1マニュファクチャラーズタイトル(メーカータイトル)獲得が確定した。

雨による影響で、コース上での実際の戦いがないままに決着という消化不良な一戦で全勝ストップとなったアウディ勢だが、ウォルフガング・ウルリッヒ・チーム代表はレース後にこう語った。「(我々ではなく)観客のみなさんにとってハッピーな一日ではなかったということだよ。2年連続でLMP1マニュファクチャラーズタイトルを獲得したことはとても誇らしく、素晴らしいことだと思っている」。無念の思いを言葉には出さず、観客への配慮とチームメンバーの働きを讃えるコメントに終始するあたりは流石、常勝将軍である。

2度目のセーフティカー先導走行中にピットインし、コクピット頭頂部から後方へと伸びる吸気系に関すると思われるトラブル対処にあたったことで、アウディ1号車は優勝を逃した。トラブル原因については「雨の影響ではない。コースが荒れた状態での走行再開だったと思うのだが、1号車はデブリを拾ってしまったのだろう」。予選で1-2を確保できず、間にトヨタ勢を挟んでしまうかたちになっていたことが災いした敗戦でもあるが、ウルリッヒ代表はそれも意に介してはいない様子。今日の不運はさておき、今季ここまでの戦いの内容に充分満足できている、そんな表情であった。

この日、優勝のトヨタ7号車をドライブしたのは中嶋一貴。そして2位になったアウディ2号車を走らせたのもまた、日本馴染みのドライバー、フランス出身のロイック・デュバルだった。ドライバーズポイント首位の彼は、総合26位(LMP1クラス4位)に終わったアンドレ・ロッテラーらアウディ1号車トリオに対するリードを40.75へと広げている(今回ハーフポイントのため、元々LMP1とLMP2を対象に11位以下へは0.5点が与えられる関係上、0.25という端数が発生している)。トム・クリステンセン、アラン・マクニッシュとともに初のドライバーズタイトル獲得へと近づいたわけだが、やはり今回は消化不良な思いが強いデュバル、レース後には「フジ…(の天候は仕方ない)」というひとことでこの日を総括した。

日本のトップカテゴリーで2006年から活躍しているデュバルだが、実はフォーミュラ・ニッポン(現スーパーフォーミュラ)における来日初戦の富士戦が、今回のような荒天によるコース上のバトルなき決着だった。「もう1回、似たケースがあったよね?」。その通りで、08年の同シリーズ第7戦富士でも2レース制の第2レースが同じような決着になっている。富士でのトップカテゴリーレースの“セーフティカー先導走行のみ決着”は、おそらく今回が近代3回目。だから彼も「フジ…」のひとことになるのだ。

デュバルはドライバーズタイトルに関しては「まだ決まったわけじゃない。ポイント的に自分たち2号車がいい位置にいることは確かだけど」としたうえで、「今日はチャンピオンシップのことより、観客のみんなのことで心のなかがいっぱいだよ」と、第2の母国のファンを気遣った。「でも誰にも文句を言うことはできないよね。天気ばかりはどうにもならない。レースを止めた判断は正解だったと思う」。デュバルは日程重複のスーパーフォーミュラ最終戦を欠場して臨むWECの次戦第7戦で、ビッグタイトル獲得確定に挑む。

今季のWECは残り2戦。第7戦は中国・上海で、11月9日決勝の日程で開催される予定だ。

レースは3度目のセーフティカー先導ラン開始直後に、赤旗打ち切りで終了となった。 アウディ1号車はトラブルに泣いた。 混乱を極めた富士戦。モニターには、レース運営に関する情報が次々に掲示されていった。 アウディ1号車がピットイン、これでトップの座はトヨタ7号車に。 レーススチュワードの判断が何度もプレスルーム内に告げられた。 アウディ R18 e-tronクワトロ《撮影 益田和久》 アウディ2号車 アウディ R18 e-tronクワトロ《撮影 益田和久》 アウディのドライバーたち。左から1号車のトレルイエ、ロッテラー、ファスラー、2号車のデュバル、クリステンセン、マクニッシュ。