優勝記者会見で「複雑な気持ちです」と語った、トヨタの中嶋一貴(右)。僚友のブルツ(中央)とラピエール(左)も同じ気持ちだろう。

20日、富士スピードウェイで開催された世界耐久選手権(WEC)第6戦決勝は、雨に翻弄され続けた結果、“実質無競争決着”でその幕を閉じた。中嶋一貴組の#7 トヨタTS030 HYBRIDが富士戦連覇を達成、アウディの開幕からの連勝がストップしている。

計3度のセーフティカー(SC)先導ランのみの“戦い”は、その3度目の走行開始となった通算17周目の途中で打ち切り終了。一度もコース上での競争状態を経ないままの決着は、勝ったトヨタ、今季初黒星を喫したアウディ、その他すべての競技者にとって不本意なものとなってしまったわけだが、レース後、ドライバーやチーム関係者の多くは「なにより観客のみなさんに申し訳ない」との旨を異口同音に語っていた。「レーススチュワードの判断は正解だと思う」というのも共通した意見で、残念ながら今日の富士はレースできるコンディションにはなかった、ということのようである。

こういった実質無競争決着のケースでは、普通は予選1位が勝つものだが、勝ったのはLMP1クラス予選3位だった#7 トヨタ(一貴/アレックス・ブルツ/ニコラス・ラピエール)。予選2位の#8 トヨタはダミーグリッドへと向かう際にピット出口がクローズ、実質1周遅れのスタートとなって勝負権を失い、予選1位の#1 アウディは2度目のSCラン中のマシントラブル対処によるピットインでトップの座を明け渡した。つまり、実際の戦いこそなかったものの「こういうなかでもいろいろなドラマがあって、僕たちが一番前にいた、ということだと思います」(一貴)。

富士戦連覇達成でアウディの全勝を阻止したわけだが、一貴も「その実感はないですね」というのが正直なところだ。「ドライでアウディとガチンコ勝負をしていてもいいレースができたと思うので、それを見せられなかったことが残念です」。こちらが本音。ただ「(自分たち7号車が)ミスなくレースできたことによる結果ですから、これもレースかな、と思います」。コース上での戦いがないままでの優勝というレアケースのなかでもさらにレアな、3位からの逆転優勝。それについては一定の満足感を得ているようであった。

一貴個人としては、自力でGT500チャンピオン獲得の可能性があるSUPER GT最終戦もてぎ(11月3日決勝)で、今度は戦い抜いての美酒を目指すことになる。「前戦オートポリスの勝利は大きかったと思います。(自力タイトル獲得に向けて)頑張ります」。

その他の日本人勢では、マシントラブルによる予選不出走で最後尾グリッド発進となった小林可夢偉組#71 フェラーリはLMGTE-Proクラス5位。これも他車の脱落によりひとつ順位が上がった格好で、やはりドラマはあったことになる。またLMP2クラスでは、平中克幸/植田正幸/ビヨン・ビルドハイムというGT300でお馴染みのメンバーが乗り組んだ#27 ザイテックZ11SN・ニッサンが3位に。平中は「予選で3位になっていたからこその表彰台、ということだと思います」との旨を語っており、一貴同様、消化不良のなかにも達成感を得たようであった。

この週末に発表されたWECの2014年暫定カレンダーでは、富士戦は今季同様第6戦として10月3〜5日に開催が予定されている。来年は正真正銘のレースが見られることを願いたい。

決勝日の富士スピードウェイは悪天候に翻弄された。 トヨタ7号車が予選3位から逆転優勝。写真:TOYOTA(練習走行日) 観客にとってこその“耐久レース”となってしまった一日。感謝の気持ちとして、レース後はピットレーンが開放された。 トヨタ8号車はダミーグリッドにつけず、実質1周遅れのスタート。赤旗中断時の停止位置もLMGTEのマシン群の中に。 小林可夢偉組の#71 フェラーリ。