三菱自動車 商品戦略本部商品企画部の小俣雅由氏《撮影 太宰吉崇》

SUVでありながら、“プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・カー”(以下、PHEV)でもある「アウトランダーPHEV」の魅力は、これまでどのクルマでも達成することのできなかった走行性能と、新たな付加価値にある。

今回は、三菱自動車 商品戦略本部 商品企画部の小俣雅由氏に、その特長と魅力について語っていただいた。


◆歴代の技術を駆使して生まれた走り

「アウトランダーPHEVが目指した走りは、これまで三菱自動車(以下、三菱)が培ってきた3つの得意分野を組み合わせたものです。SUVの代表格であるパジェロの悪路走破性能、ランサー・エボリューションのS-AWC技術、そしてi-MiEVにおけるパワートレーンの電動化です」と小俣氏は話す。

この3分野は、どれも三菱を代表するコア技術だが、これらが組み合わされた走りのどこに楽しさがあるのだろうか? 最初の柱であるパジェロで培ったSUV性能から紐解いていく。

「ツインモーター4WD技術は他社にはない技術ですが、それでも機械式のデファレンシャル機構をもつパジェロの悪路走破性と比較してしまうと、岩場など極端な悪路での脱出性能はかなわないというのは事実です。しかし、電気的に結合されているツインモーター4WDは、たとえば内輪が空転してしまった場合、瞬時に空転した車輪への駆動力伝達をストップし、その他の車輪に駆動力を集中させるなど、駆動力の適正な配分により早期に車両の安定性を高めることができます。また、重量のかさむデファレンシャル機構を持たないため、車両重量の軽量化にも貢献し、結果、実用燃費性能を高めることにも成功しました」(小俣氏)。

軽量化はベースモデルのアウトランダーから徹底的に行われてきた部分で、超高張力鋼板の積極的な採用により成し遂げられたものだ。超高張力鋼板は、軽量かつ高剛性を誇るものの、コストが高く、さらにプレス工程における製造難易度が高いため、それこそ開発段階から徹底した生産管理がなければ採用することができない高度な手法だ。


◆HVと4WD+AYCの組み合わせによる革新

さらに、アウトランダーPHEVとS-AWCの組み合わせは、これまでのハイブリッドカーには寄せられなかった新たな期待があったという。「アウトランダーPHEVを開発するにあたり、“ハイブリッドカーは2WD”というイメージが強く、実際に販売されているハイブリッドカーも多くがFFモデルであるため、雪に弱いと心配される声を多く頂いていました。アウトランダーPHEVはツインモーター4WD+AYCという低μ路でも威力を発揮する安定した走破性能に加えて、最低地上高も190mm確保していますので路面の轍に強いことも特徴です。東北地方をはじめとした豪雪地帯で使われるお客様には、きっとご満足を頂けることと信じて商品化を進めてきました」(小俣氏)。

ただ、一方で燃費性能を訴求するエコカーの分野では、SUVやAWDは不利ではないかという懸念もあったというが、プラグインハイブリッドモード燃費67.0km/リットル(カタログ値)を達成したことにより、それも次第に払拭されていったという。「正統派のSUVらしく全高が高い(1680mm)ため全面投影面積はそれに比例して大きくなります。当然、燃費数値には不利な方向です。しかし、アウトランダーPHEVでは高効率な駆動/回生制御を開発したことで、それを凌駕することのできるカタログ燃費を達成しました。また、実際にお使い頂いているお客様の実用燃費などの情報がWEBなどのコミュニティを通じて広まっていくにつれ、“SUVでも、しっかりエコカー”というご評価を頂くようになりました」(小俣氏)。


◆パドル回生での減速が燃費向上に貢献

とはいえ、これだけ新たな一面を見せつけられると、たくましい走破性能とともに、乗り手に特別な運転技術がなくとも扱えるフレンドリーな一面も欲しい。そうした意味で、急な下り勾配をブレーキ操作なしに安定して走行できる「ヒルディセント機構」の追加を望んでしまう。悪路に入らずとも、ウインタースポーツなどでの道すがら下り勾配で遭遇しがちな凍結路面などでは、想像以上の真価を発揮するからだ。

ステアリングコラムに装着された「パドル式回生レベルセレクター」や、フロアシフトの「セレクターレバー」をBポジションに入れて操作することで、かなり強い減速度が得られるというが、今後はSUVならではの走行シーンへの対応も積極的に検討頂きたい。回生力の強化だけでの成立が難しければ、ASCのブレーキ制御との連携を強めるなど、作動速度域を限定すれば可能となるのではないだろうか。

「この回生レベルは任意の5段階から選べますが、加えて、まったく回生力がまったく発生しないB0モードも設定しています。B0モードでは、いかにも抵抗の少ない滑るような走りが楽しめます。これもアウトランダーPHEVで味わって頂きたい魅力です」と話す小俣氏。たしかに、車体がフワッと軽くなったかのように路面を滑る走りは魅力的。周辺の交通環境を見極めながら、時にパドル回生で段階的に減速していけば、想像をはるかに超えた燃費数値が達成できるだろう。


◆ランエボ譲りの駆動システム

2つ目の柱であるランサー・エボリューションにも通ずるこだわりの駆動システム。それを実現したのは、前後に2つのモーターを配置したツインモーター4WD方式と、車両運動統合システムであるS-AWCだ。

「ランサー・エボリューションでは、S-AWCに対して速さを生み出すセッティングを施し、たとえばサーキットでラップタイムを削ったり、ワインディングロードで刺激的な走りが楽しめるように造り込みました。対して、アウトランダーPHEVでは同じS-AWC技術を基本としながら、運転が得意な方でなくても、自ずと安全で快適な走りを手にすることができるようなセッティングに変更しています。これにより、運転環境が悪化する雨天や雪道であっても神経をすり減らすことなく、目的地まで快適に移動できることを目指しました」(小俣氏)。

また、重量物であるバッテリーを床下に搭載し重心高を抑えた(ベースのアウトランダー比マイナス30mm)ことで安定感を高める一方、ロールセンター高を一定の高さに留めたことで、きついカーブでも車体のロールが抑制されスムースな走りが楽しめる。加えて、前後重量配分は前/後で55/45(フル乗車になると50/50により近づく)となるよう最適化するなど、走りの基本骨格にはランサー・エボリューションと同じ考え方を用いている。


◆ライフラインの確保も可能な「バッテリーチャージモード」

3つ目の柱であるi-MiEVから始まった電動パワートレーン化はどうか?

「EVやPHEVが市場に投入されて一定の時間は経過しましたが、それでも我々の調査では、EVやPHEVを運転されたことのない方々が多いという結果が出ています。アウトランダーPHEVは、通常のハイブリッドカーでの走行モードのほかに、60.2km(カタログ値)にも及ぶEV走行ができるため、EVならではの滑らかなモーター走行が楽しめます」(小俣氏)。

日本における車両の1日あたりの平均的な移動距離に換算して2倍以上となる60.2kmのEV走行を可能としたのは、12kwhもの大容量を誇る駆動用リチウムイオンバッテリー。充電環境が整っていれば、ほぼ毎日、EVとしての走りを堪能できるわけだ。

このように真のSUVでありながら、環境にも配慮するアウトランダーPHEVのもうひとつの魅力はバッテリーに蓄えた電力の使い方にある。PHEVであるため、走行時に電力を使い切ることができるのだ。電欠を気にせずにEV走行が楽しめる解放感はEVにはない特権だ。「EV走行での制約がないことに加えて、電気を持ち運べる点がアウトランダーPHEVの新たな付加価値です。ハイブリッド走行モードでバッテリー残量を保持する"バッテリーセーブモード"に加えて、エンジンで積極的に発電しながら走行してバッテリーに電力を蓄え、EV走行や、外部へ100V(1500W)電源を供給する"バッテリーチャージモード"など、スタイルに応じたハイブリッドなカーライフが楽しめます」(小俣氏)。

この「電気を持ち運ぶ」という発想は、災害時にも威力を発揮する。「バッテリーチャージモード」は停車中でも発電が可能となるため、照明や暖房機器、調理などに必要な電力の確保ができるほか、ライフライン確保による精神安定剤の役割も果たしてくれる。

「将来的には、EVやPHEVと、V2Hやスマートグリッドの関係性がますます深くなっていくのではないかと考えています。そうした時代に、新しい価値観をもったアウトランダーPHEVの存在が大きく成長し、ひとりでも多くのお客様のお役に立てればうれしいですね」(小俣氏)。


三菱が培った3つの柱と、電気を持ち運ぶという付加価値の組み合わせ。これこそがアウトランダーPHEVの強みであり、走りの楽しさの原点だ。PHEVシステムの昇華とともに、将来的にはミニバンである『デリカD:5』などへの積極的な展開も期待したい。

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