アウトランダーPHEV《撮影者 松下宏》

『アウトランダーPHEV』は発売直後にリチウムイオン電池の発熱・溶融の不具合が発生してリコールになった。出荷したクルマを回収し、電池を交換するというかつてない対応によってリコール作業が終了した。

日本のリコールの仕組みや技術的な問題を考えると、ほかの対応法をとるのは難しかったとはいえ、回収と交換はかつてない立派なリコール対応だった。

クルマの電動化は大きな流れだが、電池の性能や価格に限界があり、EVには航続距離の不安がつきまとう。その不安を解消するのがエンジンで発電できるPHEVであり、これが当面の現実的な最適解であると思う。現にアウトランダーPHEVはガソリン車を大きく上回る航続距離(879km)を実現する。

搭載エンジンは直列4気筒2.0リットルだ。アウトランダーPHEVではエンジンは補助的な存在で、前後にそれぞれ60kWの出力を持つ電気モーターを搭載し、電池の残量があるときには基本的にEVとして走る4WD車だ。

12kW/hのリチウムイオン電池は床下に搭載され、関連するジェネレーターやコントロールユニットなどを含めても、居住空間やラゲッジスペースをほとんどスポイルしていない。

ただし、乗車定員はガソリン車が3列シートの7人乗りであるのに対し、PHEVは2列シートの5人乗りに限られる。これはPHEV化したことの影響が表面化した部分だ。

発進時はとても静かでスムーズ。この静かや滑らかさ、そしてすぐに最大トルクが立ち上がる力強さは、まさに電気自動車の走りである。アクセルを踏み込んでいくとトランスミッションによる切り換えがなく、切れ目のない加速が味わえる。

電池がフル充電の状態なら、EVモードで60kmほどの距離を走れる。普通の使い方をしていると、日常生活の大半をカバーできることになる。電気自動車として走るだけでエンジンをほとんど使わないことも考えられる。

更にいえば、EVモードのままでも最高速は時速120kmに達するので、上手に走らせれば高速クルージングも含めて電気自動車として走ることも可能だ。電池の残量が30%程度にまで減ると、自動的にエンジンが始動して発電する。

通常の走りは電池が優先だが、郊外に出かけて自然の中でEV走行したいときなどに備え、セーブモードやチャージモードが設定されている。積極的にエンジンを使って発電・充電しながら走ることもできる。

ほかにもエネルギー回生を上手にやっているのを始め、重量バランスの良さやS−AWCになどによる操縦安定性の高さ、などなどアウトランダーPHEVには長所がたくさんある。

発売直後に電池のリコールでつまずいたのは実に残念だが、クルマの仕上がり自体は相当に良い。車両価格も表面的には高いが、補助金やエネルギーコストを考えると経済合理性にもかなう。良く売れてしかるべきクルマだと思う。

唯一のネックは、事実上、自宅に充電設備を備えられる人でないと買えないこと。EVにも共通する弱点だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★


松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

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