三菱自動車工業 商品戦略本部 商品企画部の戸邉哲哉氏《撮影 稲葉九》

三菱自動車は昨年12月26日に発表した『アウトランダーPHEV』に搭載されている駆動用電池の不具合(i-MiEVとMINICAB-MiEVも同様)に関し3月27日に公表、原因について4月24日に記者会見を行った。

同社のEV(電気自動車)技術をベースにEV走行距離60.2km、エンジンによる発電も可能と、PHEVとしての魅力を満載し、期待も大きかっただけにこのつまずきは同社にとって正直痛手あったことは容易に想像できる。

しかし早めの公表や原因究明に対しての経過報告、さらに再発防止策に目処が付いたことで6月24日にリコールの届け出を行い、生産も再開されることとなった。

今回、商品戦略本部 商品企画部 マネージャーの戸邉哲哉氏にこれまでの流れを振り返ってもらいつつ、アウトランダーPHEVを含めた今後の同社の環境戦略について聞いた。


◆顧客に支えられての再出発、驚くほど高かった急速充電機能のニーズ

「8月25日に新聞に再生産開始のお知らせをださせて頂きましたがその反響は概ねポジティブなものが多かったです」と戸邉氏はまず最初に顧客からの期待とまた納車への手応えを掴んだという。

今回のリローンチ(再生産)に関してはこの段階ではCM展開などは行っていなかったのだが、それでも受注は徐々に伸びてきており、現在販売の中心は「G NAVI Package(397.8万円)」だという。

またこのクルマに関しては急速充電機能や冬季時の電力消費を抑えることができる電気式温水ヒーターなどをメーカーオプション設定しているが、急速充電に関しては約70%以上の顧客が要望しており、受注傾向としても減る傾向は見られないそうだ。

この急速充電オプション、実は当初同社としては届いても50%程度と想定していたそうだ。その理由としては「このクルマはPHEVですが、ガソリンで発電することもできますから急速充電ができなくてもいいかな、というお客様が多いと見ていたからです」(戸邉氏)。

しかし現実にはもっとEVで走りたいというニーズが多かったことがこの高い装着率につながっているという。「このままこれが続くのであれば年式変更等で標準装備化することも検討している」(戸邉氏)という計画も視野に入れているほど急速充電機能のニーズが高いことがわかる。


◆高いバリュー(価値)を築けたのはi-MiEVからの経験

販売の現場ではアウトランダー(ガソリン車)に設定されている7人乗りがPHEVに無い事に対して「どうしてもPHEVの場合、モーターやジェネレーター、そして一番大きいのがバッテリーがプラスされます。しかしそれらが居住空間と荷室空間にそれが影響しないように設計すると7人乗りは諦めざる得なかった。しかし5人乗りのSUVとしての機能は損なわないで作ることができた」(半田氏)とのことである。

またクルマを開発する際に一体いくらだったら買ってもらえるのか調査を行いターゲットを設定するわけだが、これに実際の製造コストを当てはめてみると当然ギャップが発生する。単純にコストを積み上げていくとまったく吊り合わないわけだが、それでは一体どうやってこの差を埋めたのであろうか。それに対しては「まず数年間i-MiEVの量産で得た“経験”と“ノウハウ”が大きいと思います。類似のコンポーネントも使っていることでコストダウンの工夫もしやすかったことや、ある程度の数を作ることでサプライヤーとの取引をさせてもらったことが大きかった」(戸邉氏)。


◆SUVの良さをPHEVで再認識させたい

現在、アウトランダーPHEVは日本での販売が行われているが、今後は欧州各国、具体的にはオランダ、ノルウェー、スイスなどへ輸出していくという。これらの国々は元々環境意識が高く、低燃費車への優遇税制も充実していることから、この地域を皮切りに展開し、追って欧州全域に広げていくという考えだ。またその後は北米での販売も検討しているという。

さて、今回あえて「何故、SUVであるアウトランダーにPHEVを設定したのか」という質問をぶつけてみた。日本のマーケットでは正直一時期のようなSUVムーブメントは無い。一方、同社が持つ、いくつかの環境技術のうちPHEVはひとつの“切り札”でもあるはず。それでもあえてアウトランダーにこの技術を搭載した理由は何なのだろうか。

まずこのPHEVのシステムとクルマとのパッケージの釣り合いを考えるとSUVが適しているというのがハード的な見地からの理由である。また同社はこれまでもパジェロを筆頭に日本のSUV市場を牽引してきた功労者でもある。その強みを持つ同社だからこそ新しい技術をSUVに搭載することで他社にはない製品づくりができるのではないか、という考えを持ったそうだ。

さらに「SUV自体が大きくて燃費が悪いということで時代にマッチしにくい部分があったわけです。しかし我々はこれを何とか救いたい。環境に後ろめたくないクルマにしたかったわけです。一方でSUVは人や荷物が沢山載せられる空間としては快適なクルマでもあります。だからこそ当社のPHEV技術を使って引き上げたいと思ったわけです」(半田氏)という同社のSUVに対する強い“愛”すら感じるものだった。


◆PHEVの敷居を下げて間口を拡げることが重要

今後の展開も含めた話を伺うと「元々このクルマはEVだからと特別なもの、という設定にはしていません。今までのクルマと同様の感覚でEVの良さが味わえるように敷居を下げているわけです」(戸邉氏)。さらにもっと気楽にこちらの世界(EV)に来てもらえるように技術的にも門戸を拡げていきたいとのこと。

実際、普段の通勤や買い物などはEVで十分、さらに遠隔地へのドライブへはPHEVとして走り、現地に着いたらまたEVで走る、といった楽しみも提案していきたいと考えているそうだ。「実際、EVで山や森に行くと今まで聞こえてこなかった川のせせらぎや風の音を愉しむこともできます。こんな世界をもっと伝えていきたいですね」(戸邉氏)とのことだ。

最後に同社の環境ビジョンとして2020年までにCO2を半分(2005年比)に、その内電動車両の割合を20%に引き上げるという目標を定めている。「先のことはまだ言えないですが、このPHEVという技術も順次他の車両に展開していきたいと考えています」(戸邉氏)

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