ホンダ フィットハイブリッド(プロトタイプ)

ホンダが9月にフルモデルチェンジする主力コンパクトカー『フィット』。3代目となる次期モデルの量産試作車と思われるプロトタイプのメディア向け試乗会が北海道のテストコース、鷹栖プルービングセンターで行われた。


◆7速DCTと電気モーターを組み合わせた「i-DCD」

次期フィットでもっとも注目を集めそうなのは、何と言ってもハイブリッドモデルだろう。現行モデルのハイブリッドシステム「IMA」に代えて、7速デュアルクラッチ自動変速機(DCT)と電気モーターを組み合わせた「i-DCD」が投入され、JC08モード走行時の燃費性能を現行の26.4km/リットルから一気に10km/リットル増しの36.4km/リットルに引き上げられた。その新世代ハイブリッドパワートレインについての短評をお届けする。

次期フィットハイブリッドには通常モデルと「Sパッケージ」の2種類がある。前者はクルマに制御を任せて安楽にドライブするための、後者は任意のギア段を選べるパドルシフトを持ち、積極的にドライビングを楽しむためのグレードだ。


◆従来のIMAともTHSとも異なるフィーリング

最初に乗ったのはノーマル。試乗車は暖気が終了した状態で、メインスイッチを入れてもエンジンはかからず、スロットルを踏み込むと、電気モーターのパワーだけで推定1.1トン台のボディが実に軽やかに発進した。デュアルクラッチ変速機側にモーターがついているため、クラッチが切れている状態ではエンジンを回すことなくモーターだけで走行可能。エンジンにモーターが直付けされ、発進時に必ずエンジンがかかっていたIMAとはまったく異なるフィーリングだ。

IMAだけでなく、最大のライバルであるトヨタ『アクア』とも大きく違う。アクアは形式上は1個のモーターで走行とエネルギー回生の両方をこなすパラレルハイブリッド式で、リチウムイオン電池パックはモーターをフルパワーで回せるだけの電力を放出する能力が与えられている。モーターパワーは22kW(30馬力)と、従来型のIMAモデルで最もモーター出力が大きい『CR-Z』の15kWの約5割増しだ。

アクアの場合、モータースペックは45kWhと、フィットの2倍以上の能力を持つが、それはエンジンが発電機を回して得られた電力とバッテリーからの電力を合算したエネルギーを有効活用するためのもので、エンジンをかけずニッケル水素電池パックの出力だけで走行可能なのは、10kWくらい。ハイブリッドカーでのエコランを考えると電力を無駄遣いするのはあまり得策ではないが、EVっぽさではフィットハイブリッドに軍配が上がると感じられた。


◆ドライブフィールはスムーズ至極

i-DCDの7速デュアルクラッチ変速機は、ホンダの四輪にとっては初モノの技術。チューニングでいちばん難しいスムーズネスについて注意深く観察してみた。昨年11月に現行フィットにi-DCDを実装した試作車をテストドライブした時には変速時にわずかにジャダー(不整振動)が出ていたのだが、果たしてファインチューニングが進んだ量産車では、ほぼ解消されていた。

試乗時間が長くなかったため、多くのドライビングパターンを試すことができたわけではないが、「モーター制御を変速やエンジンがかかる瞬間のショックの緩和に積極的に利用した」(開発スタッフ)こともあってか、変速をほとんど意識させないスムーズさが印象的だった。

ただし、エンジントルクが立ち上がってから一瞬後にモーターアシストがかかるのが明確にわかるシーンが1度だけあった。ドライバーがどうしたいのかという判定にコンピュータが迷ったものと推測される。大した違和感ではないが、スロットル操作のパターンによっては再現性のある現象かもしれない。


◆追い越しや山道でも苦にならない

次にパワー感。1.5リットルエンジンと電気モーターが同時に出せるシステム出力の最大値は101kW(137ps)。エンジンは新開発で、エネルギー効率の高いミラーサイクルだが、可変バルブタイミングリフト機構などによってオットーサイクルに近い領域で運転することも可能なように設計されており、最高出力は81kW(101ps)。アクアの54kW(73ps)に対して大幅なアドバンテージを持つ部分だ。

その“速さ”の点では、新型フィットハイブリッドは、コンパクトカーとしては申し分のないレベルだった。もちろんエネルギーを使う絶対量が増えればそれだけ燃費も落ちるであろうが、追い越しや山岳路走行など、いざ機敏な走りが欲しい時にクルマが応えてくれるのは、ドライバーにとっては喜ばしいことだろう。

ブレーキは先にデビューしたハイブリッドの上位モデル『アコードハイブリッド』にも採用された「電動サーボブレーキ」。モーターが小さいため回生出力も劣るのではないかと思ったが、ホンダのエンジニアによれば、約30kW相当のブレーキングまではディスクブレーキを使わず発電抗力だけでこなせるという。ということは、モーターの駆動出力は22kWに制限されているが潜在的な能力はもっと高く、バッテリー側の回生受け入れ性も余裕があるということか。30kWの減速ができるとするならば、車重1.6トン台のアコードよりもっと大きな減速Gまで回生オンリーでカバーできることになる。これはエコランマニアには嬉しいスペックだ。


◆DCTながらマイルドなシフトフィール、表示には改善の余地あり

パドルシフトを装備したSパッケージは、エネルギー効率にこだわらなければ、シフトアップ&ダウンを駆使したスポーティな走りを楽しむことができる。非ハイブリッドにもスポーティモデル「1.5RS」があるが、その自動変速機はCVT(無段変速機)なので、MT以外でステップシフトを楽しみたいなら必然的にハイブリッドをセレクトすることになる。

そのシフト感は、デュアルクラッチ変速機としてはややマイルドな味付け。また、モーターアシストによるトルクのゆとりを生かすためか、7速という多段シフトではあるが、ヨーロッパのスポーツハッチバックのように2-3-4速がクロスレシオ(ギア比の差を小さくし、エンジン回転数を高めに保つ設定)となっているわけではなく、手動変速を存分に楽しむ場合はかなり気合を入れた走りをする必要がありそうだった。もっとも、変速操作に対するレスポンスの俊敏さはやはり魅力的。クルマを積極制御したいユーザーからはかなりの支持を集められそうだった。

いいことばかりではない。そのせっかくのデュアルクラッチドライブを少なからずスポイルしたのが、メーターパネルのレイアウトだ。せっかく任意に変速できるというのに、メーターパネル内にタコメーターがなく、とくにシフトダウンの時などエンジン音頼みの操作となってしまい、スポーティさを楽しむどころではなかった。

クルマを降りてからエンジニアにそのことを話すと、燃費計などを表示するインフォメーションディスプレイを切り替えればタコメーター表示にもできるとの回答。そのタコメーターはきわめて小さく、視認性は決してよろしくないのだが、せめてパドルシフト使用時にはタコメーター表示に自動的に切り替わるといったインターフェースの工夫がほしいところだった。

総じて、次期フィットハイブリッドのパワートレインの完成度は、IMAとは比べ物にならないほどに進化していた。09年、ホンダがハイブリッド専用車である2代目『インサイト』を発売したときは、スペックやシステムの洗練性の低さがたたって、ハイブリッドの巨人トヨタへのカウンターテクノロジーを期待していたユーザーを失望させるという結末に終わった。

短時間の試乗に限って言えば、次期フィットハイブリッドにおいては、そのネガティブファクターはほぼ完全に払拭されていた。次期フィットハイブリッドが自動車市場をどう刺激するか、またどんなユーザーレビューが出てくるか楽しみなところだ。

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