ロイック・デュバル選手

アウディR18 e-tron quattroを駆り、6月のルマン24時間レースで自身初の総合優勝を成し遂げたロイック・デュバル。全日本選手権スーパーフォーミュラ第3戦(7月13〜14日)に凱旋参戦した彼が、「偉大な伝説の一部になった」喜びについて語ってくれた。

フランス出身で、ルマンの直前に31歳になったデュバルは、2006年から日本のトップカテゴリーで継続的に活動している有力ドライバーのひとりである。09年にはフォーミュラ・ニッポン(スーパーフォーミュラの前身)でシリーズチャンピオンを獲得し、10年にはSUPER GTシリーズのGT500クラスチャンピオンにも輝いた。チャンスに恵まれればF1で活躍していた可能性も高い有能なドライバーで、何に乗ってもいきなり速いのが特徴といえるだろう。その彼が、ルマン総合優勝という新たな栄誉を手に入れた。

「モータースポーツが特に好きという人でなくとも、世界中の多くの人が知っている伝説的なレースで勝つということは、やはり特別だと思う。ルマンという偉大な伝説の一部になる、そういう感覚があるんだ」

母国で得た、素晴らしき勝利。しかしながら、それから1カ月弱を経た現段階において、喜びを実感できるほどの時間と余裕は、まだ足りていないようである。

「正直なところ、個人的には勝った実感(喜び)はまだ薄い。きっと、シーズンが終わって冬になった頃、本格的に味わうことができるんだろうと思うよ。やはりシーズン中というのはタイトだし、ましてやルマンで優勝した後、このひと月弱ほどは本当に忙しいからね」

世界的なビッグレースを制したことで、珍しい経験をする機会もあったようだ。

「フランスではテレビや新聞のインタビューも多かったし、僕たちアウディドライバーにとって“ビッグファミリー”であるアウディスポーツのドイツファクトリーも訪問した。そう、スペインではCM撮影のために役者さん、ムービースターにもなったんだよ! あれは難しかったな。今はとにかく、トラベル・アンド・ワークという感じの日々だね」

今回もスーパーフォーミュラ富士戦を終えたらすぐに日本を発つという多忙なデュバル。ともにルマンを制したトム・クリステンセンが9度目(歴代最多を更新)、アラン・マクニッシュも3度目の総合優勝だったことを考えると、彼は世界で一番新しい“偉大な伝説の一部”なのだから、それもやむを得ない、といったところだろうか。

同じアウディ陣営にはアンドレ・ロッテラーやブノワ・トレルイエという、デュバル同様にFニッポンとGT500でタイトルを獲得した、日本でもお馴染みのドライバーがいるが「個人として3連覇できなかったアンドレやブノワが『今年は勝てなくてよかった』と思うことがあるとしたら、それはこの多忙さを味わわずに済んだ、ということなんじゃないかな。もちろん、とても嬉しい忙しさではあるけどね」と冗談混じりに言って、デュバルは笑顔を見せる。

難しいとは思うが、もし今、時間を取ることができたなら、何がしたいだろうか。この質問に対しては、やはりというべきだと思うが「少しでも時間があれば、自分にとって一番大切な存在である妻と息子と一緒に自宅でゆっくり過ごしたい。そうすることで自分自身のバッテリーをリチャージできるからね」という答えが返ってきた。

ロイック・デュバル選手 スーパーフォーミュラ予選トップ3会見(中央・ロイック・デュバル) ロイック・デュバル 写真:TOYOTA