GARMIN fenixJ《撮影 山田正昭》

登山やトレッキングで必須アイテムとなっているABCウォッチ。高度計(Altimeter)、気圧計(Barometer)、コンパス(Compass)を搭載した腕時計のことだ。

トレーニング用GPSウォッチとアウトドア用ハンドヘルドGPSのトップブランドであるGARMINがこのABCウォッチに得意のGPSテクノロジーをプラスし、Suuntoに先行されてきたアウトドアGPSウォッチのカテゴリーへ本格的に勝負を挑んできた。

◆重さ85グラムの腕時計にあらゆる機能を凝縮

本機の見た目は、少しゴツめのスポーツウォッチといった印象だ。本体は直径約50ミリの円形で、ディスプレイも円形になっており直径は30ミリ。厚みは17.4ミリと少し分厚いが、重さはわずか85グラムしかない。持ってみると見た目の印象よりはかなり軽いことに驚く。本体には大きめのボタンが5個もあり、これがただの時計ではないことを主張している。

本体は50m完全防水で、使用温度域も-20度〜50度とヘビーデューティな仕様だ。GARMINには同じ50m完全防水のGPSウォッチとして『ForeAthlete 910XTJ』というモデルがあるが、本機のデザインはまったく違った方向性になっており、同じメーカーの製品とは思えないほど。多機能かつハイテクを感じさせる910XTJに対し、本機はシンプルかつ堅牢なイメージとなっている。

このデザインの違いはもちろん想定する用途やユーザー層が違うためだが、構造的な要因もある。GARMINの従来のGPSウォッチはGPSアンテナを本体内ではなくベルトとの接続部分に収納していた。そのため全体が縦長の形状となり、デザイン的な制約にもなっていたのだが、本機は高集積化と感度アップにより本体内にアンテナを内蔵。これによってシンプルな円形のデザインが可能となったのだ。これによってベルトが自由に広がるようになったため、机の上に置いて使うような場合でも置きやすくなっている。

こうした本体に搭載される機能は、高度計、気圧計、コンパスのABCウォッチにプラスしてGPSレシーバー、外部センサーを接続するANT+、それにブルートゥース。まさに機能を凝縮したという言葉がふさわしい内容だ。充電式のバッテリーはABCウォッチとして使用する「時計モード」なら14日間、気圧計やコンパスをオンデマンドモードにすれば42日間のライフがある。GPSウォッチとして使用する「GPSモード」では毎秒測位で16時間、60秒間隔測位で50時間と、こちらも十分にロングライフだ。

◆中途半端な複合モデルではない

本機のコンパスは本体を水平にしなくても正しい方角を示すことができる3軸コンパス。高度計は一般的なABCウォッチが気圧だけを根拠に高度を割り出すため誤差があるのに対して、本機ではGPSの測位データと気圧を併用することでより正確な高度を表示する。微妙な上昇、下降も検知できるなどレスポンスにも優れた高度計だ。

GPSレシーバーは小型ながら高感度で、日本の準天頂衛星みちびきの信号を受信して測位精度を高めている。ANT+によって接続できる外部センサーはハートレートセンサー、フットポッド、スピード/ケイデンスセンサーと豊富。さらに、ワイヤレス温度センサーを接続することにより、本体の熱や体温などの影響のない外気温を測定することも可能となっているANT+による通信機能を使ってGARMINの「Oregon」シリーズなど別のGPSデバイスとルートやポイントのデータを交換することもできる。

このように、本機の機能はどれもが非常に本格的なもの。「小型な本体にしては」とか「多機能でありながら」といった前置きをする必要なく、掛け値なしのハイスペック。GARMINの説明によれば本機はABCウォッチにGPSをプラスしたモデルなのだが、決して安易に企画された中途半端な複合モデルではない。

むしろ、登山家や冒険家の絶対的な支持を受けてきたアウトドア向けのハンディGPSを進化させたモデルであり、GARMINがこれまで培ってきた技術の集大成といった趣さえ感じさせる。

◆腕時計型であることがもたらすメリットは大きい

本機は多機能でジョギングなどのフィットネスにも使うこともできるが、基本的には登山やトレッキングといったアウトドアスポーツ向けのGPSレシーバーだ。GARMINのWebサイトでも定番モデルであるOregonやeTrexシリーズと同じカテゴリーに分類している。登山では装備の軽量化は重要なので、わずか85グラムの本機のアドバンテージは非常に大きいといえるだろう。ABCウォッチを含む腕時計をこれまで使っていた人なら、それと本機を入れ替えることにより装備を増やさずに本格的なハンディGPSと同じ機能を手に入れられる。

本格的な登山をする人なら、本機がハンディGPSのようにバッテリー交換ができないことを気にするかもしれない。しかし、本機はGPSモードでも16時間ないし50時間のバッテリーライフがあるし、いつでも簡単に時計モードへの切り替え、つまりGPS機能をオフにすることが出来る。ハンディGPSでも休憩中などに電源を切る人は多いと思うが、ボタンを長押ししたり起動まで時間がかかったりして面倒なものだ。しかし、本機は赤いボタンを2回押すだけで瞬時に切り替えができ、しかもGPS機能をオフにした時計モードでも気温や気圧のモニターは継続する。この点は従来のハンディGPSより優れているといえるだろう。

従来のガーミンのランニングウォッチとは違い、ベルトを開いて机の上に置くことができるようになった。《撮影 山田正昭》 円形のディスプレイは解像度こそ低いものの、高コントラストで視認性は非常に高い。外周部の目盛りは時計モードでは秒針の役割をする。《撮影 山田正昭》 横から見るとやはり厚みを感じるその代わり、GPSアンテナが本体内に内蔵されたため、下方向への出っ張りはなくなった。《撮影 山田正昭》 裏面にはUSB接続用の4つの接点がある。裏ブタは金属製だがボディは耐衝撃性プラスチック製で、これが軽さの秘密といえる。《撮影 山田正昭》 左側には3個のボタンがある。上部がローレット加工されたボタンは非常に押しやすい。《撮影 山田正昭》 右側のボタンは2つ。その間にある溝は充電用のクレードルを装着するためのものだ。《撮影 山田正昭》 充電用のクレードルは爪で本体に固定するタイプ。ガーミン製品ではこれまでマグネット式や洗濯バサミのような形状のものもあったが、このクレードルが今までで一番使いやすいと感じた。《撮影 山田正昭》 クレードルへの装着時はこのようになる。バッテリーの充電状況がパーセント表示されるのは非常にありがたい。《撮影 山田正昭》 3軸コンパスなので本体を水平にしても垂直にしても正しい方角を表示する。数字は基準となる方角(通常は北)からの角度を表し、その単位をミルに変更することも可能だ。《撮影 山田正昭》 GPSを搭載しないABCウォッチの気圧高度計は頻繁に校正をしないと誤差が大きくなる。一方、GPSによる測位も水平方向に比べて上下方向はかなり誤差が大きい。本機はGPSによる測位と気圧高度計の両方のデータをうまく使い、より正確な高度を割り出すようになっている。《撮影 山田正昭》 普段使う音はあまりないが、このように受信している衛星の状況を表示することができる。上空が開けた場所なら誤差10メートル以内の測位が可能で、さらに平均位置測定機能を使えば複数回の測位データを組み合わせてさらに精度の高い測位ができる。《撮影 山田正昭》 赤いボタンを押すとメニューが表示されるが、必ず「GPSスタート」という項目が選択された状態になっているので、もう一度赤いボタンをおすことでGPS機能がオンとなる。《撮影 山田正昭》 通常は毎秒1回ずつ測位するが、衛星受信モードを「ウルトラトラック」にすることで60秒に1回に変更できる。《撮影 山田正昭》