ラウンドテーブルで記者たちの質問に丁寧に答えるカルロス・ゴーンCEO

日産自動車のカルロス・ゴーン社長は1月5日、CESでの基調講演の後、プレス向けにラスベガス市内のホテルでラウンドテーブルを囲んだ。

その中で真っ先に質問として上がったのは、20日に大統領に就任するトランプ氏の言動に対してだ。特に「自動車メーカー各社にメキシコでの生産を米国内に移すべき」との発言をどう思うかというもの。ゴーン氏は「メキシコでの生産は既にトランプ政権の前段階で決まったことであり、今の時点でこの計画を変えるつもりはない」と回答した。

EVに関する質問も多く出た。一つは新興国に対しての投入計画として、「規制が厳しくなっている中国では低価格帯のEV投入を考えている」とし、インドやロシアについては「インフラの整備状況を見ながら対応していきたい」とした。また、同じEVを手掛けるテスラとの競合については「テスラ社は市場に出す2年ほど前にコンセプトを発表することが多いが、実現が伴わないこともある。日産としてはもう少し慎重に事を進めていきたい」と新車投入についてテスラとの違いを強調した。

各社が取り組む自動運転についての質問も相次いだ。「日産には『GT-R』のようなスポーツカーがあるのに、自動運転が実現すると運転する楽しみがなくなるのではないか」との質問も飛び出す。それについてゴーン氏は「20年、30年経てば状況はわからないが、当面はいくら技術が向上しても、人間が介在することがなくなる状況にはない」。一方で「事故の9割は人間が原因。オートマティックになっても消費者はより簡単さを好むし、それに対応することが必要だ。実現に向けた法規上の対応も欠かせない」とした。

自動運転に向け、新しい規則や法律が定められていくと思われる。それに対する心配はないかとの質問には、「自分たちは安全面を最優先に考慮しており、規則や法律に則って安全性を高めていく。技術者からはとくに普及の妨げになるという報告は受けていない」(ゴーン氏)と回答。また、自動運転の実現に向け、ハンズオフが可能となればアイズオフもできるのではないかとの声。ゴーン氏は「今はレベル2の状況にあり、完全なアイズオフ/ハンズオフはできず、ドライバーが責任を持って対応しなければならない状況にある」とした。

日本で「プロパイロット」を『セレナ』だけに投入しているのはなぜなのかとの質問もあった。ゴーン氏は「セレナは多くのファミリー層に受け入れられる車両であり、その評価について多くのフィードバックが得られやすいから」と回答。セレナへのプロパイロット投入は、市場調査的な側面があったとする。

自動車のマーケットについて、ウーバーなどの伸長により、車を買う人が減るのではないかと心配する声も出た。「運転者は減るかもしれないが、車の販売台数は減るどころか、逆に増えるとみている。クルマは単なる移動するための道具ではなく、パーソナルな空間として価値を見いだす人も増えているからで、今後はテクノロジーの開発によって、それがより快適になっていく」(ゴーン氏)とした。

ラウンドテーブルを終えて感じたのは、100人以上はいると思われる記者たちを前に、約1時間にわたって一人ずつ丁寧に答えるゴーン氏の姿が印象的だった。特に質問者が手を上げるとゴーン氏は質問者の声が直に聞こえる場所まで移動。質問者の目を見ながらしっかりと答えていくという姿勢を見せた。こういった姿は日産社員ですらあまり見たことがないという。グローバルでの日産の本気度が伝わってくるラウンドテーブルだった。

記者たちの目前にまで近づき、質問者の目を見ながら答えるカルロス・ゴーンCEO カルロス・ゴーンCEO カルロス・ゴーンCEO ラウンドテーブルが行われた「SLSラスベガス トリビュート ポートフォリオ リゾート」のファウンドリーホール