ダイハツ・ブーン現行

好調、年末年始の読み物「期待外れの車」シリーズ。いい素質を持っているのになあ……。発表時点でみんなが期待した、しかしその期待に応えることのできなかった、“がっかり”モデルを紹介しています。今回の筆者は井元康一郎さん。


軽の技術でコンパクトカーを変えていく---。こんな売り文句とともに登場したのが、ダイハツのリッターカー『ブーン』(&トヨタ『パッソ』)だ。2004年に登場した初代モデルから目いっぱい軽の技術が投入されていたはずだが、“軽の技術”を標榜する理由は何か。

素晴らしいのは室内の広さで、前席、後席とも窮屈感はほとんど覚えずにすむ。全高1525mmという立体駐車場に入る車高のリッターカーとしては、この上ないと言っていい広さである。この広さを実現できたのは前後輪の距離、すなわちホイールベースが2490mmと長いためだ。単に長いだけでなく、全長3650mmに対してホイールベースの占める割合は実に68%にも達する。これは一般的なコンパクトカーよりずっと長く、軽自動車に近い。エンジンルームを小さく作る、まさに軽自動車作りの技術が生かされている部分と言えよう。

これで走りが小気味よく、乗り心地も悪くなければ、まさに軽の技術によるコンパクトカーづくりで新境地を拓くモデルになったのだろうが、残念なことに広さ以外の部分については、燃費以外に取り得がないと言っても過言ではない始末だった。とりわけ乗り心地については、これが軽の技術なんて軽自動車に失礼だろうと思うくらい良くなかった。

いまどきの軽自動車は完成度が素晴らしく、ホンダの『N ONE』は東京〜鹿児島間のツーリングもゆうゆうとこなせる性能を持っていた。ブーンと同じダイハツ製のスーパーハイトワゴン『タント』でも800kmほどツーリングしたことがあるが、これまた高速道路での乗り心地の滑らかさに驚かされた。そして、どちらも動くことが楽しいと思わせるような味を持っていた。

パッソはその2車のみならず、他の軽自動車と比べても乗り心地は悪く、またドライブフィールも劣っていた。サスペンションの動きが悪く、ちょっと悪い道になるとガンガンときつい突き上げを食らい、ハンドリングも正確性を欠くものだった。

ダイハツとトヨタはなぜブーン/パッソをこんなクルマに仕立ててしまったのか。クルマはタイヤが4つついて、ハンドル、ブレーキ、アクセルが機能すれば最低限の役割は果たせる。が、クルマの楽しさをオーナーに強く感じさせるには、それより上の“味わい”の部分が大事になる。パッソにはドライブに引きつけるようなキャラクターは皆無で、これでは運転している人もずっと乗っていたいとは思わないだろうし、同乗させられる子供はクルマを自由の道具ではなく単なる移動手段としかとらえなくなるだろう。

軽で培った楽しいクルマづくりのノウハウ、知見をコンパクトカーにも適用し、クルマ離れに歯止めをかけるような商品に仕立てることを主眼に置けば、もっといいクルマになったろうに。そういう意味で残念なクルマだった。

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