トヨタ86GT“Limited”、オレンジメタリック/ブラック《撮影 太宰吉崇》

トヨタ『86』/スバル『BRZ』が受賞を逃したのは残念だった。僕の中での最近の車ネタに関する大きなテーマは「若者の車離れ」である。86/BRZが注目を浴びることで、車好きの子どもたちが増えるきっかけとなることを期待し、僕は10点満点を与えた。

この車が一番「良い車」だったというわけではない。完成度においてもデザインにおいても過去の価値感を引きずっている印象がある。しかし夢が薄れたこの時代に、しかも「車=夢」の部分を度外視しひたすら良い車作りを行ってきたあのトヨタが企画したということに意義がある。存在自体を評価すべきだと考えた。

今回の中で僕がとくに出来が良いと思ったのは、マツダ『CX-5』、フォルクスワーゲン『up!』、スズキ『ワゴンR』/『ワゴンRスティングレー』、そしてBMW『3シリーズ』(セダン/ツーリング)だ。

CX-5のディーゼルは素晴らしかった。日本にディーゼル車が広がっていく試金石となるだろう。up!は「ひたすら燃費命」の車作りに励んできた日系車メーカーに衝撃をもたらすはずだ。150万円で燃費もいいけど、走りの基本性能が図抜けて高い。乗った瞬間に、これこそがいい車!と誰しもが歓声を上げるはずだ。

ワゴンRはもう言うまでもない。市場が評価している(=売れている)ので専門家の言葉はいらない。個人的には、ターボを搭載したスティングレーが楽しかった。これは若者に乗ってもらいたい。

一方で、10ベストカーに残った輸入車には、良いクルマ「以外」のバリューがぎゅっと詰まっていた。

まずはレンジローバー『イヴォーク』。オーソドックスなレンジローバーの伝統をここまで変更して大丈夫なのか?と、こちらが心配になるほど斬新だ。未来を切り開くには過去のプライド(昔の価値)をぶっ壊さないといけないのだ。それをデザインで表現した。その精神に共感した。

シトロエン『DS5』も同様。初見でしっくり来ないのは、新しい提案があるからだ。凝りまくった内装はまさしくアート、個人的趣味にも合う。

そして久々に登場したアルファロメオの基幹車種『ジュリエッタ』は、4ドアのファミリーカーなのによくぞこんなデザインで出したと感心する。これらの車には未来を切り開く力を感じる。

BMW3シリーズはオーソドックスな造りだった。でもディーゼルとハイブリッドはラグジュアリーカーのお手本だ。

さあ配点はどうしたものだろう。配点方法は、10点が1台、僕の場合は86/BRZが確定として、残り4台に15点を配点する。

良い車を選ぶべきか、それ以外のバリューのある車を評価するのか。悩んだ末に、僕は「以外のバリュー」を重視して、イヴォーク5点、ジュリエッタ5点、DS5に3点。BMW3シリーズは2点。その他の良い車は全部0点とするしかなかった。

夢が描けない時代だからこそ夢の要素が必要だ。そして成熟した社会で生き残るモノは単なる優れた工業製品としてではなく、それ以外のバリュー(価値)が重要だ。そう思っている。また、そうした「以外」の要素は、子どもたち世代を車好きにする力があると思うのだ。

太田哲也|モータージャーナリスト・レーシングドライバー
1959年11月6日生まれ。自動車評論家、レーシングドライバー。4年連続でル・マン24時間レースにフェラーリで出場するなど日本一のフェラーリ遣いの異名を取ったプロフェッショナル・レーシングドライバー。
1998年全日本GT選手権第2戦富士スピードウェイで多重事故に巻き込まれ瀕死の重傷を負う。再起不能といわれながら、23回の手術とリハビリを繰り返し、事故から2年半後にサーキットに復帰した。その後、社会復帰を果たし、現在は自動車評論家として多数の連載をもつ。
車選びの本『世界でいちばん乗りたい車』(幻冬舎)はシリーズ化され、第二弾「もう迷わない! 知識ゼロからのクルマ選び」が発売される。ほかに著作として、復帰までを自らが綴った『クラッシュ』と続編『リバース』(幻冬舎)は、スポーツドキュメントとしては異例のベストセラーになり映画化になる。『生き方ナビ』(清流出版)は、学生、教育関係者から絶大な支持を集め中学高校で道徳や総合学習の教材としても使われている。太田哲也公式ウェブサイトhttp://www.keep-on-racing.com/

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