諸星陽一

私はCOTYのイヤーカーを選ぶときに、10年後に「あの年はどんな年だったか?」を思い出せるような象徴的なクルマにしたい、という気持ちを持っています。もちろん、「とんでも」なクルマではなく、いいクルマでその年を象徴するクルマという意味です。

2012-2013年日本カー・オブ・ザ・イヤーの投票において、私はトヨタ『86』/スバル『BRZ』に10点を投じました。エントリーした30台のなかから選ばれた10ベストカーはどれも魅力的なクルマでしたが、10年後に2012年を思い出させる象徴的なクルマは86/BRZ以外にないと感じました。

私を含め、多くの自動車ジャーナリスト、ライターは「FRのスポーツカーを作れ」「FRのスポーツカーが欲しい」「日本にはスポーツカーが必要だ」と声をあげてきました。トヨタとスバルは、その声に応えて(と信じたい)実車を世に送り出したのです。自分の発言には責任を持たなくてなりません。だから10点を入れました。また、2011年の東京モーターショーの会場で、入場制限まで起きた注目度も無視できないことだと思っています。

さらに付け加えるなら、トヨタとスバルという異なる文化を持つ企業が、一緒に開発を行い1台のクルマを作り上げた、ということも評価に値すると思っています。

COTYの最終投票のレギュレーションは、25点の持ち点のなかから10点を1台に、残り15点を4台に配点。ただし最高配点は10点でそれは1台のみ、となっています。つまり10台中5台は0点にしないとなりません。10ベストカーにまで残ったクルマのなかから0点を5台選ぶというのは、かなり酷です。重箱の隅をつつくような作業をくりかえして、取捨選択を行ないました。

スズキ『ワゴンR』/『ワゴンRスティングレー』、BMW『3シリーズ』(セダン/ツーリング)、レンジローバー『イヴォーク』の3台には4点、マツダ『CX-5』には3点を配点しました。0点のクルマとこの4台に3点差や4点差があるわけではありませんし、10点のクルマに対して40%や30%しか評価していないというわけではありません。あくまで25点の持ち点を配分するとこうなってしまうというだけです。

基本的にはクルマそのものを評価した配点ですが、最後にイヴォークとCX-5の配点で悩みました。この2車についた1点の差は、10年後に2012年を思い出したとき、を考えたからです。

諸星陽一|モーター・フォトジャーナリスト/AJAJ会員/JMS会員
3歳で三輪車、小学生から中学生まで自転車、高校生でバイクからクルマへと、つねに乗り物とともに過ごしてきた。23歳で自動車雑誌の編集者となり、その後フリーランスに。29歳からは自費でプロダクションカーレースへ参戦。金銭的に苦労したクルマ生活によって、整備の知識を身につけるようになり、それを土台にしたセルフメンテナンス系の記事も手がける。また、福祉車両などをはじめとした、ユニバーサルデザインにも関心を持つ。仕事に対する姿勢は、足を運び、見て、乗って、感じて、撮って、書く。自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。

スバル BRZ S《撮影者 太宰吉崇》 スバル BRZ S《撮影者 太宰吉崇》 スバル BRZ S《撮影者 太宰吉崇》 スバル BRZ S《撮影者 太宰吉崇》 スバル BRZ S《撮影者 太宰吉崇》