トヨタ・アギア(ジャカルタモーターショー12)《撮影 土屋篤司》

◆低コスト・低環境負荷のエントリーカー

インドネシアのエントリーカー優遇政策である「LCGC」(ローコスト・グリーンカー)が、ようやく発進する見通しとなってきた。9月のジャカルタモーターショーでは、この政策に沿った第1弾となるトヨタ自動車とダイハツ工業の新モデルが発表され、生産も始まっている。現地日系自動車メーカーの多くは、政府が年末までには正式なLCGCの内容を公表するだろうと観測している。

LCGCは、インドネシアの自動車市場で主流となっている3列シートのMPV(多目的車)よりコンパクトなエントリーカーを普及させる狙い。文字通り低コストで環境負荷の小さいクルマを認定、ハッチバック車の場合で車両価格の10%課税となっている奢侈税を免除する優遇策が講じられる見通し。

LCGCのスペックは、価格1億ルピア(約85万円)以下、排気量1.2リットル以下、燃費性能20km/リットル程度以上…などと現地メーカーでは想定されている。「想定」というのは、2年ほど前から正式なスペックの発表が取りざたされてきたが、いまだにその日は来ていないからだ。

◆国民車でなく「国産車」を強調したい

背景にはインドネシア政府がLCGCを単なる「国民車」でなく、産業力を高める真の「国産車」として育成したいという事情があるからで、スペックの最終決定に手間取っている。輸出の義務付けについても検討しているとされ、2010年から第1号(日産『マーチ』)の量産や輸出が始まっているタイの「エコカー」政策へのライバル意識もうかがえる。

9月に発表され、結果的にはLCGCの“ひな型”になるであろうトヨタの『アギア』とダイハツの『アイラ』(いずれも排気量1リットル)には、インドネシアの国産車をアピールする造りが随所にみられる。アギアの場合だと、ブランドのエンブレムは「トヨタ」ではなく、合弁パートナーの社名も併記した「アストラトヨタ」となっている。中国の合弁会社で生産する車両と同じやり方だ。

また、ボンネットのエンブレムも楕円を組み合わせたトヨタマークではなく、同国の神話上の鳥「ガルーダ」をモチーフにしている。アギアとアイラは、ダイハツと現地法人のアストラ・ダイハツ・モーター(ADM)が企画・開発し、デザインはインドネシア人を主体に進められた。現地部品の調達率についても「80%を確保する」(ダイハツの伊奈功一社長)という。

◆日産はダットサン、ホンダはブリオの派生車で参入へ

ADMは両モデルの現地生産も担当し、年12万台の能力をもつ新工場(カラワン組立工場)を建設、既存モデルを含む生産がこの10月に始まっている。9月の発表後に、トヨタとダイハツのディーラーは予約受注も開始した。トヨタ系の有力ディーラー関係者によると、予約はかつてないハイペースで積み上がりつつあるという。

既成事実が外堀を埋めるようなちぐはぐな展開である。日系メーカー関係者は「ダイハツさんはこのための工場まで立ち上げたのだから、政府もLCGCとして認可しないわけにはいかない。年内には発表され、2013年初めにはアギアとアイラが発売されることになろう」と観測する。ADMの野本隆会長は、LCGCの政府発表については口をつぐむものの、新工場については「13年春にはフル稼働の予定」とし、アイラの発売が遠くないことを示唆した。

一方、販売シェア1、2位のトヨタ、ダイハツを追う日本勢では日産自動車が「ダットサン」ブランドをLCGCとする見通しであり、14年から生産・販売する。また、ホンダは新興国向けの戦略車『ブリオ』をベースにした3列シートのMPVを開発中であり、14年初めからLCGCとして市場投入する方針としている。インドネシアは東南アジアではタイに次ぐ新車市場であり、今年の需要はタイとともに初めて100万台を突破する。LCGCの始動は、インドネシア市場が一段の成長力をつける転機となる。

トヨタ・アギア(ジャカルタモーターショー12)《撮影 土屋篤司》 トヨタ・アギア(ジャカルタモーターショー12)《撮影 土屋篤司》 トヨタ・アギア(ジャカルタモーターショー12)《撮影 土屋篤司》 ダイハツ・アイラ《撮影 柴田基宏》 ダイハツ・アイラ《撮影 柴田基宏》 ダイハツ・アイラ《撮影 土屋篤司》 ダイハツ・アイラ《撮影 柴田基宏》