クライスラー・300《撮影 内田俊一》

デトロイトの航空写真を表紙に使ったクライスラー『300』のカタログには、何と諸元表のページがない! 野暮なスペックのチェックなどせず、ファッション雑誌のような写真とコピーで世界観を理解せよ…ということか。

確かにそうだ。他車と比較しようがない300のプレゼンスは、先代からより洗練された気がする。大枠は先代の進化形だが、プレスドアからメッキのスリムなサッシ式の窓になるなど、よりエレガントさが増した。

インテリアも居心地がいい。標準グレード「300リミテッド」でも十分だが、予算が許すなら上級の「300Cラグジュアリー」を選びたい。前者が、インパネ2トーンの塗装時のマスキングテープの跡が認められるのに対し、後者はインパネ表皮までポルトローナ・フラウ社製の本革で包まれた、極上な空間が味わえるからだ。 

室内では、コンソールボックス内のUSB端子ほかが常時照明付きなのが実に親切。前後席とも居心地がいいが、とくに後席は、最近のセダンとしてはクッションがフカッ!と柔らかな感触。日本人なら、むかし父親や親戚の伯父さんの運転するクラウンやセドリックに乗せてもらい、柔らかな後席に子供だった自分の身体をうずめた原体験、記憶が蘇り、郷愁に浸れることだろう。

メルセデス・ベンツがベースのシャシーにより、乗り味、ステアリングフィールはフラットでなめらか。今回はV8のHEMIエンジンはなく、300Cを名乗る上級グレードもすべて共通の「ペンタスター」と呼ぶV6の3.6リットルエンジン(286ps/34.7kg-m)+8速ATだ。もちろん穏やかにも、逞しくも、いかようにもクルマを走らせてくれる。排気量、ボディサイズ(全長×全幅×全高=5070×1905×1495mm)が受け容れられるなら、オーセンティックな、いい上級セダンだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年より『GOLD CARトップ・ニューカー速報』の取材/執筆を皮切りにフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

クライスラー300(日本名:300C) クライスラー300(日本名:300C) クライスラー・300《撮影 内田俊一》 クライスラー・300《撮影 内田俊一》 クライスラー・300《撮影 内田俊一》